「あっ! いや~ごめんね~、なんせ輪ぼっちゃんが家に女の子連れて来るなんて初めてだから~……うんうん、もうっぼっちゃんもそういう年頃なんね~……彼女を連れてくるとはね~……」

「えぇっ!? あっ、あの違います! 私と持明院先輩はけっしてそういう関係ではなくっ……」

「なっ!? そうだ、違う!! 違うぞっ!! 藤城は彼女などでは決して……」

「いいっていいって~……お父様たちには内緒にしておくから~」

「だから違うって……」

 しかし、佐野さんはニコニコと微笑んで、私たちの必死の抗議を完全にスルーしていた。

「ともかくゆっくりしてくといいよ~、今日はたまたまみんな休み取ってて~。今は私しかいないんよ~、あんまりおもてなしは出きんけど~」

「あっ、そうだ佐野さん庭の蔵の鍵を持って来て欲しいんだが」

「蔵~? あんな物置の中なんか入ってどうするんです?」

「学校の課題で昔の文献が見たいんだ」

「ああ、なんだてっきり私は二人で暗いとこにでも入りたいのかと思いましたよ~」

「なっ!?」

「ふぇっ!?」

 私たちは思わず顔を見合わせてから、顔と両手をこれでもかと左右に振って否定した。

「ははは、冗談冗談~、それじゃお部屋にあとでお持ちしますよ~」

 全く笑えない冗談だった。

「あっ、お茶とお菓子もお持ちしますね~」

 私は深くため息を吐いて、先輩と共に佐野さんの後につき屋敷の中へと入っていった。

 高そうな調度品の数々や、立派な日本間に完全に圧倒され、私の口は終始開きっぱなしだ。

「こっちにオレの部屋がある」

 長い廊下の途中、上へと続く階段が目に入った。

佐野さんとは階段前で別れ、そこを昇って行く先輩の後ろに私はナビされるままついていく。

正確には、先輩のすぐ後ろには少女の霊がついているので、私は幽霊のあとをついていっている事になるわけだが……。

 木漏れ日の降り注ぐ二階の光景は、まるで絵画でも観ている様な気分にさせられた。

 襖や障子の並ぶ和室の中、窓や廊下に敷き詰められた絨毯、壁の装飾や照明は洋風でモダンな雰囲気の和と洋がミックスされている。

「ここがオレの部屋だ、入れ」

 先輩は廊下の奥にある洋風な扉の前でそう言って、扉を開けた。

「…………あっ、アレ?」

 そして、私はなんとなく予想していた先輩の部屋と、今、目の前に広がる部屋の光景に言葉を失った。

「先輩……心霊は?」

 私の予想では、先輩は部屋の中に心霊関係のポスターやらグッズをところせましと並べ、その数はきっと部室の倍以上、いやもっと! という感じの部屋に住んでいるのではないかと勝手に思いこんでいたのだが。

 現実は違った。