図書館には、駅前から徒歩で通学路と調度反対方向の道を行けば5分程で到着した。
早速私達は、例のトンネルの事を調べる為、町の歴史や民俗史、過去の新聞等をあらいざらい探しだした。
「図書館なんて久しぶりです」
「なに? じゃあ、貴様調べ物はいつもどうしてるんだ?」
「えっ……ネットでだいたいは……」
「は~っ……なんでもかんでもネットネット! 全く近頃のやつらは~……」
「でも先輩の大好きな怖い話のサイトだってネットですよ?」
「アレは別だ! 神聖かつ崇高な紳士の嗜み的スペースだ!」
「せ、先輩……」
周りを見ると、静かな図書館で私たちは注目の的となっていた。
「コホンっ……図書館では静かにするもんだ」
気を取り直し、静かに調査を再会する。
「でも昨日ネットで調べてみたんですが、あまりあのトンネルの詳細は出てこなかったです」
「そうか……、随分と昔の事だからな、ココなら古い資料も残っているだろう」
二人しばらく資料を探し続け、私はようやくそれらしい物を見つける事が出来た。
「先輩、この本に少しトンネルの事が書いてありました。廃線になる前に事故があって閉鎖されたってなっています」
それはこの町の古くからの歴史や、名所等が紹介されている本だった。
「藤城……」
「はい?」
私が本を開いて先輩に見せようとすると、何故か先輩は眉間に皺を寄せて苦悶の表情を浮かべた。
「先輩?」
「実は……オマエに、一つ言っておかなければならない事があるんだ」
「言っておかなきゃいけない事、なんです?」
先輩はいつも見せない戸惑った様な表情をして、しばらく口籠もる。
「アノ話なのだが……」
「アノ話?」
「トンネルの……男女の話だ」
「ああ、あの時話してくれた怪談話ですか?」
「ああ、それの事なのだが……」
大きく息を吐き、先輩はボソっと言葉を発した。
「アノ話はな、ウソなんだ」
「はぁっ!?」
思わず大きな声を出してしまった私に、周囲の人の冷たい視線が集中した。
小声で謝罪を呟くと、声のトーンを落として先輩に詰め寄る。
「ど、どういう事ですか!? ウソって?」
「アレはオレの創作した話だ。せっかくあんな雰囲気の良い場所へ行くのに、怖い逸話の一つも無いというのは風情がないと思ってな」
風情って……、先輩の感覚にはほとほとついていけそうにない。
「昔、事故があって閉鎖されたのは本当だ。だが、幽霊なんて出た話しは一度も聞いた事もないし、心霊スポットでも実はない……あそこはただの廃トンネルだ」
「ただの廃トンネル? えっ? じゃあ、白い少女の幽霊は?」
「いない、いたらいいな~というオレの願望だ」
「願望って……、えっ? 待って下さい、じゃあ、アノ話が先輩の創作だというのなら、その女の子は……」
一体、ダレ──?