私は不安とも恐怖ともつかない、モヤモヤとした気持ちになり、その日の部活はなんだか上の空の状態で終了した。
駅へと向かう帰り道を歩きながら、私は富岡先輩と山寺先輩と話し合っていた。
「まさか、憑いて来るなんて思ってませんでした。やっぱり悪い霊なんでしょうか?」
富岡先輩は、腕組みをして考え込む。
「う~んでも、桃ちゃんは特にそういうの感じてないんでしょう?」
「はい」
「もう少し……様子を見てみた方がいいんじゃないかな……」
山寺先輩はそう言って眼鏡のブリッジをあげた。
「あの廃トンネルについては、詳しく調べてみた方が良いと思うんですが」
「そうだね~、いわくてきなものは輪ちゃんも詳しく言ってなかったもんね~」
「確か……事故で封鎖されたとは言ってたけど……」
「それにしても、よりによってどうして、持明院先輩なんでしょうか……」
『パッパァーーッ!』
その時──
突然、私達の後ろから車のクラクションが鳴らされた。
振り返ると、車の車種など知らない私でもわかるほど、高級そうな立派な車が真後ろに停まっている。
怪訝な顔でそれを見つめていると、後部座席の窓から持明院先輩が顔を出した。
「おい、オマエら、どうせならそこまで乗せていってやる」
「いーの? やった~!」
「寝ながら帰れる……」
二人の先輩はすぐに車に乗り込むが、私はこんな立派な車に乗るのは人生初の事もあり思わず後込みしてしまう。
「藤城、早く乗れ」
「え? あのっ!?」
私は持明院先輩に力強く車の中から腕を引かれ、先輩の家の車に同乗させてもらった。
中は広くて、四人乗ってもとても快適だ。
ふと、持明院先輩の足元に膝を抱えて座る少女に目がいく。
訂正。
四人と幽霊一人が乗っても快適だ。
私は、まじまじと幽霊の少女を見つめた。
色が白く細く華奢な体付き、髪は三つ編みにしており服装は白い半袖のシャツと膝くらいの丈のスカート、白っぼい運動靴を履いている。
あまりに見ていた為か、少女と目が合ってしまった。
その瞳は空洞で、どこまでも続く真っ暗な闇に思える。まるで、あのトンネルの様だ。
私はゾっとして全身が粟立つ感覚を覚えた。
「さぁ、着いたぞ?」
最寄りの駅に着き、私と二人の先輩は運転手さんにお礼を言って降りた。
「じゃあね~、サンキュ~輪ちゃん」
「ありがと……」
「ありがとうございました。持明院先輩」
私達は手を振って車を見送る。
その時、後部座席の窓からうっすらと笑う少女の姿が見えて、私は早くなんとかしないと、と焦る気持ちでいっぱになった。