しかし、次の日。

 問題が起きた──

「…………持明院先輩」

 放課後、部室に来た私を待っていたのは、富岡先輩と山寺先輩。

 そして、持明院先輩とその足元にいる少女。

「なんか、輪ちゃんに憑いて来ちゃったみたいなんだよね~」

 富岡先輩はのほほんと、いつものスポドリをがぶ飲みしながら苦笑いした。

 いやいやいやいやっ! 
そんな問題じゃあないですっ!!

 私があの時、真剣に対処しなかったのはこの少女の霊が、あの土地にいる地縛霊だと思ったからだ。

 私が感じた所だと、あの土地にひどく思い入れがあって、あの場所にいてたまたま入って来て見てしまった人間が、遭遇して驚いたりしただけだと思ったのだ。

 それに、そこまで悪い物も感じなかったし、まさか憑いて来るなんて……。

「だっ、大丈夫なんですか? 持明院先輩!?」

「何がだ?」

「幽霊に、とり憑かれてるんですよ!?」

 持明院先輩は腕組をしてしばらく考え込んだ。

「う~ん……そう言われてもだ、オレには何も見えんからな」

 たっ、確かにそうなのだが。

「気分が悪いとか、嫌な事が続くとか、そういった事ないんですか!?」

「う~んっ……。特には……あっ!!」

「なんですかっ!? 何かありましたかっ!?」

「今日、今この学園ですこぶる人気の[グラタン焼きそばパン]を買う為、オレは昼休みのチャイムと同時に購買までダッシュし、そしてようやくソレを手に入れる事に成功したんだ! だが、確かに買ったはずのグラタンやきそばパンが……教室に戻って来たらいつの間にか消えていた!!」

「うっかり袋から落としたとかじゃないの~?」

「違うっ! オレは両手でしっかりパンを抱えていたんだぞ!?」

「夢でも見た……とか……?」

「フン、夢ではない証拠に財布の中からは、パンの代金120円がしっかり消えていた」

「探してはみたんですか?」

「もちろんだ! 昼休みの全てをソレに費やした! だがっ! パンはドコを探しても見当たらなかったんだっ!! クソっ!! これはきっと陰謀だ!!」

 陰謀って、誰がなんの為にそんなくだらない事をすると言うんですか? って、いうかそんな事くらいしか不満が無いなら、先輩は大っ変な幸せ物です。

「あ~、そういえばさ~輪ちゃん今日、珍しく車で来てたね~」

「車?」

 富岡先輩の話しによると、持明院先輩は普段自転車で登校しているが、今日に限って車だったんだそうだ。

「どうしてですか?」

「はっ? そんなもの決まっている、運転手に怖い話のレパートリーが少ないからだ! つまらん時間は出来るだけ減らしたいからなオレは、いっそウチの運転手は怪談の神様、夏の風物詩、イヌガワさんとかにしてもらえないものか……」

「そうじゃなくて! 今日は自転車で何故、来なかったんですか?」

「別に、大した理由は無いぞ。家で階段を降りてる時、後ろから声がして……、それで振り返ったら踏み外した。大した事は無いと言ったのに、車で登校させられたんだ」

「声?」

「ああ、何を言ってるかまではわからなかったけど……」

 声? ゼロ感の持明院先輩に、霊の声が聞こえるとは到底思えないが……。