「……持明院先輩、足に……」

「はっ? 足?」

 そうだった! これも忘れていた。

 持明院先輩には霊的なものは一切見えないんだ。

「富岡先輩、山寺先輩、アレ見えますか?」

「うん、女の子がいるね~」

 富岡先輩は、あっさり冷静に答えてくれた。

「……女の子が写ってる……」

 例により山寺先輩が持明院先輩の足下にカメラを向けると、撮影したものを確認して淡々と言った。

「じ、持明院先輩、落ち着いて聞いて下さい。今、先輩の足に少女の霊がいます!」

「え? 本当かっ? どこだ? どこにいる?」

 持明院先輩は左右の足元をキョロキョロしたり、その場でぐるぐる回ったりしているが、どうやら見つけられないみたいだ。

「ふっ、フフフっ……」

「じ、持明院先輩?」

「フハハハハハハハっ!!」

 先輩!?

 もしかして、霊のせいでおかしくなった!?

 いや、先輩がおかしいのは元々だった。

「とうとう、念願の霊との接触に成功したっ!!」

「えっ!? でも、先輩見えてないんですよね?」

「ああ、全く見えん」

「じゃあ、自分じゃわからないじゃないですか?」

 すると、持明院先輩は今までにないほどに私の眼前に顔を近づけた。

 それは、本当にこのままじゃキスしてしまいそうな程の距離だ。

「藤城」

「はっ、はい……?」

「でも、オマエには見えているのだろう?」

「えっ……ええまぁ……」

「はっきりと見えてるのか?」

「へっ? あっ、はい……ばっちり見えてますけど」

「フンっ、それなら状況証拠としてはそれで十分だ! オマエが見えているのであればココに霊はいる! そして、霊は今このオレの足にすがりついている、完璧だ!」

「はっ、はぁ?」

「オレは今、霊と接触しているのだぁ!!」

「…………」

 陽も、大分傾いて来ている。

 遠くでお豆腐屋さんのラッパの音が聞こえた。

「帰ろっか~」

「うん……」

「そうですね」

 私と二人の先輩は、持明院先輩を置いて元来た道を戻り始めた。

「えっ? おいっ! ちょっと待て、オマエ達!!」



 そして、帰途についた。