そこから車を降り背丈程ある草むらを掻き分け、廃トンネルの入口を目指す。
「あ~っ、もう虫がいる気持ち悪い~! ねえ~っ、まだ着かないの~?」
「もうすぐだよ、あっ! あれじゃないか?」
4人の目の前には夜の闇よりさらに深く暗い、トンネルの入口が広がっていた。
「こんなトコ入るの?」
「ねっ、ねぇ帰ろうよ?」
D子は怯えて、C子の服の裾を引っ張った。
さすがにこの中に入る事には、みんなが躊躇してしまう。
「せっかくここまで来たんだから、入ってみようぜ?」
言いだしっぺのA男が、携帯画面の明かりをライトにして中へと進んで行く。
「まっ、待てよ~」
それに続き、B男とC子も中へと入っていく。
「みんな~! 行かないでよ~!!」
しかし、D子だけは足が震えて、中に入る事は出来なかった。
時間にして5分程だろうか、とても長く感じる。
暗闇に一人取り残され、D子はみんなの帰りをひたすら待っていた。
やがて……
暗闇の中に、ボンヤリと光る白い物をみつけた。
「お~いっ!」
「D子~? 大丈夫?」
みんなが戻って来たのだ。
「中は、特になんもなかったよ~」
「幽霊もいなかったし」
「わりとつまらなかったよね?」
みんなは、口々にそう言っていたが、D子は何かに気づき突然ガタガタと震え出す。
「…………ぁっ、そっ、それ…………」
震える指で、必死に何かを伝えようとする。しかし、恐怖のあまり言葉が出ない。
「ぃっ、イヤあぁぁぁぁぁぁーっ!!」
悲鳴をあげて、元来た道を一人走って逃げ出した。
「なんだあいつ?」
A男がそう言って、何気なく自分の足元を見た時。
彼は凍りついた──
その足元には、血の気のない真っ白い肌の少女が絡み着いていたのだ。
「……というワケで、オレも幽霊にしがみついて貰いたいんだ!!」
そんなコアラみたいな可愛い代物じゃないのに、しがみつかれたいって……。
「しがみつかれるかどうかはわかりませんが、その前にこんな所勝手に入って良いんですか?」
トンネルの前にはキチンと[立入禁止]の札が付いたロープが張られている。
「……持明院家の土地だから……特に門題はないんじゃない……」
少し涼しくなって復活した山寺先輩が、首に掛けた一眼レフカメラのレンズを磨きながら爆弾発言をした。
「そうそう、輪ちゃんが良いっていうんだし、なんせ持明院家のなんだから~」
続けて富岡先輩までが口を揃える。
「えっ? えっ? ここ、持明院先輩のおウチの土地なんですか?」
「ここっていうか、ここいら一帯だな。学校の周りはほとんどウチの土地だが」
私は、開いた口が塞がらないとは正にこのことだとばかりに絶句した。
ホントに金持ちのご子息様だったんだ、持明院先輩。
それなのに、いつもアホな事か呆れる事ばかりしかしないのは、本当に残念としか言えない。
「でも、ここなら本当に少し涼しいですから、山寺先輩も大丈夫ですね」
「うん……それに、新聞部の『夏休み前・特大号』の記事……何かないかなって思ってたから……丁度良い」
カシャっと山寺先輩は、私に向けてシャッターをおろした。
「話題の心霊スポットに生き神様来たる~! とかとかっ?」
富岡先輩までそれに乗っかる。
「やっ、やめて下さいよ~!!」
「さっ、それじゃあ早速、中に出発だ!!」