三の噂 幽霊トンネル
鳳学園、心霊研究部。
部長・持明院 輪 鳳学園理事長の孫。奇跡のゼロ感。
副部長・富岡 マサキ 富岡神社の息子。驚異の運動神経。
部員その一・山寺 彰 新聞部兼任。人間以外が被写体、心霊写真家。
部員その二・私、藤城 桃花 藤城寺の娘、すこぶる霊感持ち。
以上四名。
それは七月に入り夏休みも、もうまもなくという頃の事だ。
「あ・つ・いっ!!」
心霊研の部室では、持明院先輩が暑さの中、ひたすら愚痴をこぼしていた。
「クーラーは来週直るそうですので、それまでの辛抱ですよ」
そう、つい先日この部室のクーラーをこの夏初めて使用しようと試みた所、故障が判明……。
私達は急激に暑くなったここ数日を、なんとか扇風機とうちわ、氷枕でやり過ごしているのだった。
「まぁ、クーラー直らなくても、あとちょっとで夏休みなんだし~。我慢我慢だよ~」
富岡先輩は、冷凍させているスポドリを、首筋に当てながらうちわで扇いでいた。
「あの~、ところで持明院先輩。扇風機、一人占めにしないでもらえませんか?」
持明院先輩は、首ふりの扇風機の機能を止め、その前を陣取って一切動かない。
「ナニ~~~っ!? 藤城桃香、貴様はこのオレから、こんな猛暑の中でこ~んな微弱な風すら奪うというのかっ!? 一体これ以上、オレから何を搾取しようというんだ!?」
いえ……。
今までもこれからも、先輩から何かを搾取しようとなんて、これぽっちも思った事も、この先思う事もありません。
「はぁっ……。もういいですよ、少し窓を開ければ」
私は立ち上がり、窓に手を掛けた。
「あっ! 桃ちゃん、ダメ窓は……」
富岡先輩の声が届く前に、窓を開けた私の顔には、サウナの様な熱くこもった熱気がぶわぁっと押し寄せて来る。
「熱っ!!」
思わず私は、窓を勢いよく閉めた。
「左右、上下の部屋のクーラーから出た熱気が、外に充満してるんだよ~。だから開けると余計暑いワケ」
地球温暖化の原因は確実にこれだと、文明に頼りきった人間が招いた猛暑なのだと、私は思い知った。
「そうだ! こんな時こそ、涼しい場所に行って活動するのが一番ではないか!?」
持明院先輩がおもむろに、立ち上がる。
その足下には、ひからびてしおしおになってしまっている山寺先輩の姿があった。
「せ、先輩!? 山寺先輩!?」
「………あっ……あぁっ……」
先輩はうつろな目で天井をみつめたまま、パタリと床に伏せて動かなくなった。
「山寺先輩!?」
「あ~、彰弱いもんね~暑いのとか~」
確かに、見た目からしてあまり暑さには強そうではない。
「……もう……ダメ……だ」
「こっ、このままじゃ山寺先輩がミイラになっちゃいますよ!?」
「う~ん仕方ないね~、で、輪ちゃんその涼しい活動場所ってどこなの?」
持明院先輩はしたり顔だ。
「そんなのもちろん、決まっているだろっ?」
鳳学園、心霊研究部。
部長・持明院 輪 鳳学園理事長の孫。奇跡のゼロ感。
副部長・富岡 マサキ 富岡神社の息子。驚異の運動神経。
部員その一・山寺 彰 新聞部兼任。人間以外が被写体、心霊写真家。
部員その二・私、藤城 桃花 藤城寺の娘、すこぶる霊感持ち。
以上四名。
それは七月に入り夏休みも、もうまもなくという頃の事だ。
「あ・つ・いっ!!」
心霊研の部室では、持明院先輩が暑さの中、ひたすら愚痴をこぼしていた。
「クーラーは来週直るそうですので、それまでの辛抱ですよ」
そう、つい先日この部室のクーラーをこの夏初めて使用しようと試みた所、故障が判明……。
私達は急激に暑くなったここ数日を、なんとか扇風機とうちわ、氷枕でやり過ごしているのだった。
「まぁ、クーラー直らなくても、あとちょっとで夏休みなんだし~。我慢我慢だよ~」
富岡先輩は、冷凍させているスポドリを、首筋に当てながらうちわで扇いでいた。
「あの~、ところで持明院先輩。扇風機、一人占めにしないでもらえませんか?」
持明院先輩は、首ふりの扇風機の機能を止め、その前を陣取って一切動かない。
「ナニ~~~っ!? 藤城桃香、貴様はこのオレから、こんな猛暑の中でこ~んな微弱な風すら奪うというのかっ!? 一体これ以上、オレから何を搾取しようというんだ!?」
いえ……。
今までもこれからも、先輩から何かを搾取しようとなんて、これぽっちも思った事も、この先思う事もありません。
「はぁっ……。もういいですよ、少し窓を開ければ」
私は立ち上がり、窓に手を掛けた。
「あっ! 桃ちゃん、ダメ窓は……」
富岡先輩の声が届く前に、窓を開けた私の顔には、サウナの様な熱くこもった熱気がぶわぁっと押し寄せて来る。
「熱っ!!」
思わず私は、窓を勢いよく閉めた。
「左右、上下の部屋のクーラーから出た熱気が、外に充満してるんだよ~。だから開けると余計暑いワケ」
地球温暖化の原因は確実にこれだと、文明に頼りきった人間が招いた猛暑なのだと、私は思い知った。
「そうだ! こんな時こそ、涼しい場所に行って活動するのが一番ではないか!?」
持明院先輩がおもむろに、立ち上がる。
その足下には、ひからびてしおしおになってしまっている山寺先輩の姿があった。
「せ、先輩!? 山寺先輩!?」
「………あっ……あぁっ……」
先輩はうつろな目で天井をみつめたまま、パタリと床に伏せて動かなくなった。
「山寺先輩!?」
「あ~、彰弱いもんね~暑いのとか~」
確かに、見た目からしてあまり暑さには強そうではない。
「……もう……ダメ……だ」
「こっ、このままじゃ山寺先輩がミイラになっちゃいますよ!?」
「う~ん仕方ないね~、で、輪ちゃんその涼しい活動場所ってどこなの?」
持明院先輩はしたり顔だ。
「そんなのもちろん、決まっているだろっ?」