一の噂 鏡詣り

 鳳学園、心霊研究部。

 部長・持明院 輪、高等部二年。鳳学園理事長の孫。

 副部長・富岡 マサキ、高等部二年。富岡神社の息子。

 部員その一・山寺 彰、高等部二年。新聞部と兼任、定食屋の息子。

 部員その二・私、藤城 桃花、高等部一年。藤城寺の娘、霊感持ち。


 以上四名。

 なんだかよくわからないうちに、私は一番関わりたくない心霊研究部なんぞに属してしまった。

「イヤです! 絶対に入りません!!」

 もちろん私は、勧誘された直後、頑なに断った。

 けれど、持明院先輩は私の耳元に顔を寄せて、こう呟いたのだ。

「教祖さま……」

 持明院先輩の吐息混じりの声に、一瞬我を失いそうになったが、私はそんな事よりも言われた言葉に頭が真っ白になる。

「なっ!?」

「いいだろう、入部を断るというのなら……彰! 新聞部にとっておきのネタをこの持明院輪が提供してやろう!」

 さっきまで眠っていたはずの山寺先輩が私のすぐ隣でカメラを構えていた。

「はい……パチリ……」

「なっ、ななななっ……」

 私はその場でワナワナと震えた。

「一面の見出しはこうだ!奇跡のヒーロー 心霊バスターモモカ! 学園に降臨す!! どうだっ!?」

「いやぁー!!」 

 更に、持明院先輩は今までの私の武勇伝を学園中にバラ捲き、私を教祖と崇め奉っていたクラスメイト全員を、うちの文化祭に呼んで心霊ツアーを開催するとまで言って来たのだ。

「どうする? 藤城桃香? 心霊研究部に入るか、入らないか……貴様の今後の学園生活はその選択で決まるのだ」

「くう~~~~っ……この卑怯者~」

「ふんっ、なんとでも言えばいい」

「輪ちゃんて悪役っぽい時が一番、輝いてるよね~」

 富岡先輩は私たちのやりとりを笑顔で見守っているだけだった。

 助けては、やっぱりくれないのか……。

「…………入部させてください」

 どんな事があっても、せっかくの私の今迄築き上げて来た(とは言っても二ヶ月足らずの期間だが)普通の日常は絶対に壊したくない。

 その為渋々、私は心霊研究部なるものに強制的に入部させられた。


 けれどまだ、この部の活動内容は一体何をするのか、私は全く知らされていなかった。