先輩たちは男性だ。

 つまり、私はいくら部活の一環で、これが人助けの為とはいえ、一つ屋根の下、男性と寝食を共にするという、とんでもない事実に気づいてしまったのだった。

 いや、いやいや、コレはいわば修学旅行と一緒だ。

 そう思おう!

 そうだ、そうそう、何もそんなドキドキの展開なんか無いはず。

 うん!!

 私が心の中でそう自分に言い聞かせていると、不意に富岡先輩が私の顔をのぞき込んだ。

「桃ちゃん?」

「……うひょっ!?」

「平気? なんか顔赤いけど……」

「だ、だいじょうぶれす!」

 平常心、脳内にそんな言葉を叩き込み、作り笑いを富岡先輩に見せる。

「ね、桃ちゃんどう? なんかこの家にいる?」

 ねねちゃんがお風呂に行ったのを見計らい、富岡先輩は早速、私に何かこの家には霊的な物を感じるかどうかと質問した。

「いえっ……特には何も感じないです。家の周りにも霊的な物は見えませんでしたし……」

「そっかぁ~、じゃあやっぱり黒い女は人間かな~、そんな気がするし……」

「気ですか?」

「そう、カンっていうのかな~」

「ただのカンじゃあない! マサキは、スーパー第6感の持ち主なんだぞっ!」

 突然、持明院先輩が私達の間に、濡れたスポンジと皿を持って割り込んで来た。

「マサキのカンは未来予知に等しい! なんせ、マサキは週末の国民的アニメのジャンケンで負けた事がないんだぞっ!」

 ああ、あの番組の最後に主役のキャラが視聴者を巻き込んでじゃんけんするヤツ……。

 まるで、自分の事の様に持明院先輩は鼻高々である。

 山寺先輩も不思議とカンが当たったが、富岡先輩もどうやら同じ様に不思議な力があるのかもしれない。

 だとしたら、そんなメンバーを勘違いや偶然で集めた持明院先輩もやはりある意味凄いと思う。

「じゃあ、富岡先輩は今回の件はやはりただの不審者だと思っていますか?」

「う~ん、人間なんだろうけどね、なんだかちょっと厄介なモノかもしれないね~……」

 富岡先輩は、そうポツリと溢した。

「厄介?」

「そう、人間のが面倒な事ってあるでしょ?」

「それってどういう……」

「お風呂あがったよ? 桃香ちゃん次どうぞ」 

 私達がそんな会話をしているうちに、お風呂から帰って来たパジャマ姿のねねちゃんが現れた。

「タオル、出しておいたから使ってね」

「あっ、うんっ! ありがとうねねちゃん」

 私は、寝間着代わりのジャージを持ってお風呂場へ向かった。

 富岡先輩の言う『厄介なモノ』ってなんだろう……?

 そんな事を思いながら私のお風呂タイムは過ぎていった。

 お風呂から出た私は、みんなのいる居間へ向かうべく廊下を歩いた。

 距離は短いが電気のスイッチがわからなかったので、周りがよく見えない。


 そんな中、私は不意に背後に何かの気配を感じた──