High school horror Show


ねねちゃんの自宅は、学校の最寄駅からはバスで20分程の、住宅地にある。

 バス停の前は、ショッピングモールなんかもあって結構栄えているし、コンビニや24時間のスーパーも近くにあって人通りも多い。

「公園の先に見える青い屋根の家が、私のウチです」

 しばらく歩いていくと大きな公園があって、その奥の路地を入るとねねちゃんの家が見えてきた。

「……ところで、さっきから何してるんですか? 持明院先輩」

 学校から出た時から、持明院先輩は壁に張り付き、時には地面に俯せになり、後ろやら横やらを頻りに警戒しながら進んでいる。

「はっ! 決まっているだろ!? こうして周囲を警戒し、いつ敵の奇襲があっても良い様に神経を張り詰めているのだ。傭兵として当然の行動だぞっ!」

 先輩、傭兵だったんだ…………。

 持明院先輩は更に警戒体制をとりながら何故か、手に持ったゴキブリ専用殺虫剤を、拳銃の様に構えた。

「それで……、なんでそんな物持ってるんです?」

「部室には、武器になる様な物がコレしかなかったからだ!」

 一旦、自宅に帰って再度集合という案もあったのだが、持明院先輩がとにかく今すぐ速攻で行く! とか言いだしたので、必要な物を取りに帰る事は出来なかったのだ。

 それにしても、お粗末過ぎる武器だと思う。

「みんなの後ろはオレが守るから安心して良いよ~」

 富岡先輩は持って来た竹刀で、またお気に入りの竜殺しのポーズをとっている。

 そんな二人を見て、私は深い溜め息を吐いた。

 山寺先輩に至っては、私達と距離をとり他人のフリを決め込んでいる。

ズルイですよ、先輩一人だけ……。

出来れば私も今この二人とは他人でいたいですよ。

「はぁ~……ねねちゃん、なんかゴメンね……。先輩達これでも真面目にやってるんだけど」

「ううん、凄く嬉しかったよ。私の話しを信じてくれてこうして来て貰えたんだもん」

 ねねちゃんはそう言うと、久しぶりに笑顔を見せてくれた。

臨戦態勢の二人の先輩のやり取りを見ながら、気のせいかちょっと安心している様にすら見える。

「桃香ちゃん、ありがとう」

 私はその時初めて、先輩達に少なからずの感謝をした。

 そうこうしているうちに、私達はねねちゃんの自宅の前に辿り着いた。

お家は一戸建ての可愛い建物で、真っ白な壁に屋根や窓枠は綺麗なブルー。

ねねちゃんのお母さんが昔、海外旅行で行ったチュニジアを、イメージしたおうちなんだそうだ。

 小さなお庭には、ガーデニングが趣味というお父さんが作った、マーガレットが白い絨毯を作っている。

 庭の隅には空っぽの犬小屋が見えた。おそらくマロンのものだろう。

「そう言えば、マロンは……」

と、私が聞いたのとほぼ同時にねねちゃんが玄関を開けそして、茶色の大きなふわふわがすごいスピードで何故か持明院先輩にのしかかって来た。

「ぉわっ!?」

「…………こっ、コラ! マロンっ!!」

ちぎれんばかりに尻尾を振って、持明院先輩の顔をべろんべろんに舐めている。

「ほ、本当にすみません、すみません!!」

ねねちゃんはなんとかマロンを持明院先輩から引き剥がし、ひたすら謝っていた。

「ふっ……やはり動物の勘というヤツだな、この持明院輪の素晴らしさは犬にすぐ伝わったのだろう」

そう言いながら、持明院先輩はねねちゃんからもらったタオルで顔をゴシゴシ拭いていた。