High school horror Show


「桃ちゃんは、その女っていうの見たの?」

 こそっと耳打ちをされた。

「いっ、いえ私は見てないです……」

「そっかぁっ……。じゃあ相手が人間かこの世ならざる物かは、わからないって事だね~」

 富岡先輩は、そう言って考え込む。

「ちなみに……豊国さんは霊感とかあるの……?」

 山寺先輩はねねちゃんを、カメラのレンズ越しに見つめて質問した。

「いっ、いえ……幽霊なんて見た事は今までないですし……」

「そう……じゃあ、人間の可能性のが今のところは高いね……」

「あっ、あの……」

 ねねちゃんは、口を開いた。

「実は今日一日、母が大事な仕事があって家にいなくて……」

 どうやら、ねねちゃんは今日だけ、自宅に一人っきりになってしまうらしい。

「あんな事があったばかりだから、断ろうかって言われたんだけど……、お母さんにはあんまり迷惑かけたくなくて、今日は、本当なら親戚の人の家に泊まりに行こうとしてたんです」

 持明院先輩が、その言葉に食いついた。

「つまり……。今日がその女を捕まえる絶好のチャンスという事だな」

 そう言って、不敵な笑みを浮かべる。

 頼んでおいてなんだが、大丈夫なのだろうかと今更怒涛の不安ラッシュに私は苛まれる。

 そんな私の気持ちを見透かす様に、富岡先輩にポンっと背中を叩かれた。

「大丈夫だよ。いざとなったらオレがそいつにウチの道場に伝わる、富岡一刀流必殺奥義・竜殺しの異名を持つ、ドラゴンスナイパーをくらわしてやるからね!」

 富岡先輩…………。

 それは、なんとなく剣道の技ではないと思います。

 やっぱり不安しかないです。

「本当に……助けて頂けるんですか?」

 ねねちゃんが、三人の先輩の顔を不安気に見回す。

「藤城の友達は、ウチの部員と言っても過言では無いからなっ!」

 過言です、持明院先輩。

「困ってる人を、ほっとけないもんね~」

 やっぱり、富岡先輩は優しいな。

 でも、その構えはドラゴンなんとかですか……。

 壁に立てかけてあった竹刀を突然握った富岡先輩は、見た事もない妙な構え方で宙を素早くしきりに突いている。

「じゃあ、一応記念に……」

 山寺先輩は私とねねちゃんに向けてカメラのシャッターを切った。

「どうですか? 何か写りましたか?」

 こそっと聞いてみると、山寺先輩はボソリと一言。

「安心して……豊国さんには、何も……」

 と、カナリ気になるセリフを言って、また私に撮った写真を見せてはくれなかった。


 大きな不安は残ったものの、そんな理由で私達はねねちゃんの自宅へと向かった。