「オレは、貴様をずーっと待っていたんだっ! 寺生まれのTさん!!」
「寺生まれの……Tさん?」
キョトンとしている私に、富岡先輩が説明を始めた。
「あのね、輪ちゃんはネットの大型掲示板のオカルト板で【洒落にならんよ~な怖い話】ってスレの住人なんだよ~」
「スレ? 住人?」
私には全くよくわからない単語が並んでいたが、富岡先輩の話によれば、ネットで語り継がれる都市伝説的人物、それが[寺生まれのTさん]らしい。
「Tさんはスゴイんだぞ、破~っ! って言って悪い霊や化け物達を、一瞬で木端微塵にやっつけてしまうんだっ!!」
よくわからないが、持明院先輩は、そのTさんとやらのファンらしい。
そして、どうやらTさんという人は、幽霊や化物達にとってはカナリ物騒な危険人物らしい事だけは、なんとか理解出来た。
「それで、なんで私が、寺生まれのTさんなんですか?」
「フンっ、貴様は寺の子で、苗字のイニシャルがTじゃないか?」
「私の苗字のイニシャルはFですけど……」
「えっ…………?」
持明院先輩の顔が、明らかに強張った。
「私の苗字は藤城(ふじしろ)なのでFです」
「ふじ……しろ……? とうじょう、じゃないのか?」
「はいっ…………」
しばし沈黙が流れた。
「……うっ、うおぉぉぉぉぉぉっっ!! なんたる失態!! また、またかっ!? またなのかっ!?」
「まっ、また?」
持明院先輩は一人取り乱し叫んでいた。
「実はオレもね、入学した時、輪ちゃんにTさんに間違われたんだよね~」
確かに富岡先輩のイニシャルはTだ。
「でもさ~、オレち寺じゃなくて、神社なんだよね~」
ケラケラ笑いながら、富岡先輩はそう言った。
「ぅっ……うぅっ……、今度こそはと思っていたんだ……」
「すっ、すみません」
なんだか良くわからず、私は謝った。
すると突然──
ふいに私の耳に小さな声が聞こえて来た。
「…………うるさい……」
「えっ? まだ……誰かいるんですか……?」
私の後ろに積まれていたダンボールの山がもぞもぞと動いている。
ダンボールの隙間に入り込む様にして、確かに誰かがいるようだ。
「あっ、彰~おはよ~」
富岡先輩が声をかけるとその人物はむっくりと起きあがった。
そして、気怠そうに側の机に置いてあった眼鏡を手に取りかけると、私をマジマジと見つめる。
「……誰……?」
「藤城桃香ちゃんだよ新入生~、仲良くしてあげてね~」
「あっ、あの、藤城です……」
「コイツは山寺 彰(やまでら あきら)、新聞部の副部長もしてるんだよ~」
「よろしく……」
私は思った。
ここには、イケメンしかいないのだろうか?
艶のある黒髪は日に当たっていないだろう彼の色素のない白い肌を更に際立たせている。
シルバーフレームの眼鏡が知的な雰囲気を醸しだし、背景はダンボールだというのに彼だけがまるで絵画みたいだ。
「彰はね~名字に寺ってついてただけで、輪ちゃんにココに連れて来られたんだよ~、プッフ……コイツんち定食屋なのにさ~、アハハハハ……」
富岡先輩は腹を抱えて笑っていた。
山寺先輩に至ってはもはや、イニシャルの事すらどうでも良くなっている。
私は今までの話を統括して、理解する。
持明院先輩は多分、ちょっと……ううんかなりのアホ……いや、残念なイケメンの様だ。
「じゃ……おやすみ……」
「えぇっ!?」
そうして、山寺先輩は速攻また眼鏡を外し眠りについてしまった。
「だっ……だが、貴様! 中学までクラスメイトから心霊バスターやら、神やら、教祖やらと崇められる程、霊感が強かったのだろう!?」
ようやく立ち直った持明院先輩は叫んだ。
「なっ、なんでそれを……!?」
その事実を隠す為に、私は誰一人としてその黒歴史を知ってる人がいない、こんな遠くの学校まで通う事にしたっていうのに。
「ふふっ……この持明院輪様の手にかかれば、ザッとこんなものだ!」
「輪ちゃん、色々調べ上げるのに二ヶ月近くかかったもんね~。名字を間違えてたのは凡ミスだけど~」
「でっ、でも、だったら、なんだっていうんですか!?」
持明院先輩と富岡先輩は顔を見合わせ、私に満面の微笑みで言った。
「心霊研究部に入るんだ!!」
「はっ!? え────!?」
「寺生まれの……Tさん?」
キョトンとしている私に、富岡先輩が説明を始めた。
「あのね、輪ちゃんはネットの大型掲示板のオカルト板で【洒落にならんよ~な怖い話】ってスレの住人なんだよ~」
「スレ? 住人?」
私には全くよくわからない単語が並んでいたが、富岡先輩の話によれば、ネットで語り継がれる都市伝説的人物、それが[寺生まれのTさん]らしい。
「Tさんはスゴイんだぞ、破~っ! って言って悪い霊や化け物達を、一瞬で木端微塵にやっつけてしまうんだっ!!」
よくわからないが、持明院先輩は、そのTさんとやらのファンらしい。
そして、どうやらTさんという人は、幽霊や化物達にとってはカナリ物騒な危険人物らしい事だけは、なんとか理解出来た。
「それで、なんで私が、寺生まれのTさんなんですか?」
「フンっ、貴様は寺の子で、苗字のイニシャルがTじゃないか?」
「私の苗字のイニシャルはFですけど……」
「えっ…………?」
持明院先輩の顔が、明らかに強張った。
「私の苗字は藤城(ふじしろ)なのでFです」
「ふじ……しろ……? とうじょう、じゃないのか?」
「はいっ…………」
しばし沈黙が流れた。
「……うっ、うおぉぉぉぉぉぉっっ!! なんたる失態!! また、またかっ!? またなのかっ!?」
「まっ、また?」
持明院先輩は一人取り乱し叫んでいた。
「実はオレもね、入学した時、輪ちゃんにTさんに間違われたんだよね~」
確かに富岡先輩のイニシャルはTだ。
「でもさ~、オレち寺じゃなくて、神社なんだよね~」
ケラケラ笑いながら、富岡先輩はそう言った。
「ぅっ……うぅっ……、今度こそはと思っていたんだ……」
「すっ、すみません」
なんだか良くわからず、私は謝った。
すると突然──
ふいに私の耳に小さな声が聞こえて来た。
「…………うるさい……」
「えっ? まだ……誰かいるんですか……?」
私の後ろに積まれていたダンボールの山がもぞもぞと動いている。
ダンボールの隙間に入り込む様にして、確かに誰かがいるようだ。
「あっ、彰~おはよ~」
富岡先輩が声をかけるとその人物はむっくりと起きあがった。
そして、気怠そうに側の机に置いてあった眼鏡を手に取りかけると、私をマジマジと見つめる。
「……誰……?」
「藤城桃香ちゃんだよ新入生~、仲良くしてあげてね~」
「あっ、あの、藤城です……」
「コイツは山寺 彰(やまでら あきら)、新聞部の副部長もしてるんだよ~」
「よろしく……」
私は思った。
ここには、イケメンしかいないのだろうか?
艶のある黒髪は日に当たっていないだろう彼の色素のない白い肌を更に際立たせている。
シルバーフレームの眼鏡が知的な雰囲気を醸しだし、背景はダンボールだというのに彼だけがまるで絵画みたいだ。
「彰はね~名字に寺ってついてただけで、輪ちゃんにココに連れて来られたんだよ~、プッフ……コイツんち定食屋なのにさ~、アハハハハ……」
富岡先輩は腹を抱えて笑っていた。
山寺先輩に至ってはもはや、イニシャルの事すらどうでも良くなっている。
私は今までの話を統括して、理解する。
持明院先輩は多分、ちょっと……ううんかなりのアホ……いや、残念なイケメンの様だ。
「じゃ……おやすみ……」
「えぇっ!?」
そうして、山寺先輩は速攻また眼鏡を外し眠りについてしまった。
「だっ……だが、貴様! 中学までクラスメイトから心霊バスターやら、神やら、教祖やらと崇められる程、霊感が強かったのだろう!?」
ようやく立ち直った持明院先輩は叫んだ。
「なっ、なんでそれを……!?」
その事実を隠す為に、私は誰一人としてその黒歴史を知ってる人がいない、こんな遠くの学校まで通う事にしたっていうのに。
「ふふっ……この持明院輪様の手にかかれば、ザッとこんなものだ!」
「輪ちゃん、色々調べ上げるのに二ヶ月近くかかったもんね~。名字を間違えてたのは凡ミスだけど~」
「でっ、でも、だったら、なんだっていうんですか!?」
持明院先輩と富岡先輩は顔を見合わせ、私に満面の微笑みで言った。
「心霊研究部に入るんだ!!」
「はっ!? え────!?」