翌日。

 私はいつもより早めに家を出て、学校へと急いだ。

 昨日──

 あのメッセージを貰って、私はすぐにねねちゃんに返事を返してみた。

 しかし、返事は返って来なかった。

 心配になって何度も電話もしてみたが、出なかった。

 不安で一杯になり、昨日はなかなか寝付けず、今朝は早々と学校へ向かう事にしたのだ。

「オハヨー」

「おはよう!」

 私が教室に着くと、もう何人かの生徒は登校して来ていた。

 まあ、私の自宅の遠さから考えると、いくら早めに出てもこれが限界なのだが。

 私は教室の端の席に、ねねちゃんの姿を見つけた。

「ねねちゃん!」

 走り寄って声を掛けると、ねねちゃんは私の方を向く事なく俯いたままだ。

「昨日、メールしたのに返事が来なかったから、心配したんだよ?」

「…………ごめん……ね……」

 ねねちゃんは、消え入りそうな声でそう呟くだけだった。

 なんだか顔色も悪い。

「ねねちゃん? 具合悪そうだけど大丈夫? 保健室に行かなくても平気?」

 私の問い掛けに、無言で頷く。

「今日は無理して学校に来ない方が良かったんじゃ……」

 私のその一言で、急にねねちゃんは立ち上がって叫んだ。

「いやっ!! 家に一人でいるなんて絶対にいやっ!!」

 その声で、クラス中の視線がねねちゃんに集まる。

「ね、ねねちゃん!? どうしたの?」

 ねねちゃんは、その視線ではっと我に返り、静かに席に着いた。

「ごめん……大丈夫だから」

「ねねちゃん……」

 その日、なんだかねねちゃんは授業中もずっと何かに脅えている様子で、時折、教室の窓から外の様子を恐る恐る何度も確認しては震えていた。

 お昼休み。

 私は、いつも通りねねちゃんとテラスで昼食を取る事にした。

 ねねちゃんは食欲も無い様で、購買で買った小さな牛乳パックを持ったまま俯いている。

「……ねねちゃん、何があったのか話して欲しい、私じゃ力になれないのかもしれないけど……もしかしたら少しは力になれるかもしれないし……」

 ねねちゃんは黙って俯き続けていたが、何かやっと決心が着いた様で、少しずつ話し始めた。

「ねえ……桃香ちゃん、【黒い女】の噂……聞いた事ある?」

「【黒い女】? うんっ……なんか最近話題になっているヤツだよね?」

 ねねちゃんは黙って頷いた。

「私、会ったの……その女に……」

「えっ?」

 ここからは、ねねちゃんの話しを私の脳内再生でしようと思う。