二の噂 黒い女
「ねぇっ……あの噂、知ってる?」
「あぁ、【黒い女】の噂?」
「下校時刻に校門の所に立ってて……」
「真っ黒いワンピースに真っ黒のパンプスでね、長いボサボサの髪で顔はよく見えないんだけど。真っ赤な口紅をしていて……」
「それでさ、その女に話し掛けられても、絶対にその顔を見たらいけないんだって……」
「もし、見たら…………」
鳳学園心霊研究部。
部長・持明院 輪、鳳学園理事長の孫。
脅威のゼロ感。
副部長・富岡 マサキ、富岡神社の息子。
驚異の運動神経。
部員その一・山寺 彰、新聞部兼任。
驚異の心霊写真撮影家。
部員その二・私、藤城 桃花、藤城寺の娘。
驚異の霊感持ち。
以上四名。
6月も終わりを迎えようとしていたある日。
鳳学園には妙な噂が広まっていた。
それが、【黒い女】の噂である。
昔からよくある、都市伝説の様な類の物なのか、その噂はあっという間に学園中に広まっていた。
「オレも見たい! 会いたい! 黒い女にっ!!」
心霊研究部の部室では、最早、恒例行事になりつつある持明院先輩のジタバタがまた始まっていた。
「そう言われましても……あくまでアレは噂ですし、ね~?」
私は富岡先輩に、視線で助け舟を求める。
「う~んっ……【黒い女】ね~、実際噂では聞くけど、会ったって子の話しはまだ無いしな~」
富岡先輩は、部室の冷蔵庫からストックしてある、いつものスポドリを取り出しながら私に賛同する様に言った。
「そうですよね? そんな簡単にはいかないですよね?」
「新聞部としても気になる話しだから……ちょっと調べてみたい気はするけど……」
山寺先輩はカメラのレンズを磨きながら、ぼんやりと言った。
「そうだろう、そうだろう? 彰も【黒い女】に会って、見て、触れて、『黒い女なう』とかしたいのだろっ!?」
持明院先輩……多分、今『なう』とか言ってる人ほとんどいないと思います。
「いや……別にそこまでは……そういうのは持明院に譲る……とりあえず、ちょっとその噂については調べてみたいけど……」
「なに? 本当かっ!? よし、情報が入ったら新聞部よりもまずはオレに教えるんだぞ!」
「はいはい……」
まあ、今回の話は怪談というより都市伝説よりな話だし、私の出番はなさそうだ。
幽霊話でないぶん、持明院先輩もいつもよりかは大人しめな気もするし、山寺先輩の続報を待つという事で、今日の部活は滞りなく終わった。