「多分……堂本さんは、村井さんに自分のせいで罪を犯して欲しくはなかったんじゃない……?」
「えっ?」
「いつも、心配してくれているのをわかっていたから……自分の為に村井さんが罪を犯す事が耐えられなかったんだと思う……」
「そんな……」
「だから……堂本さんは、村井さんにゴメンネって言ったんじゃないかな……?」
山寺先輩は、撮影した写真を村井さんに見せた。
私もそれを覗き込んで見る。
そこには、以前見た灰色のモヤではなく、白い眩い光が村井さんの上に降り注ぎ写っていた。
「愛……ゴメンね……」
写真を見た村井さんは、そのまま泣き崩れてしまった。
本当の事は、堂本さんにしかわからない。
でも、私はあの写真から感じた温かさから、山寺先輩の意見に素直に納得した。
多分もう、堂本さんが生霊を飛ばす事もなくなるだろう。
「藤城さん……」
気が付くと、山寺先輩の顔が吐息のかかる位の距離にあった。
「えっ!? あっ、はい……」
慌てる私とは正反対で、山寺先輩は落ち着いたいつもの調子だ。
「あの誓い……覚えてる……?」
「誓い?」
「うん……鏡詣りの……」
「あっ、ああ……えっと、一緒に唱えたあれですか?」
「そう……あれ……」
「あれがどうかしましたか?」
「うん……アレ俺はちょっと本気なんだけど……藤城さんは……?」
「えっ……?」
んっ? えっ? それって、どういう意味?
えっと、えっと、確かあのセリフって……
私はカノ者を……永遠に……
あっ、アイス? 愛すっ!!
えええええええええっ!?
いっ、いやいや、なんで!?
「……俺、藤城さんの事……いいなって思ってて……」
「へっ!? えっ!? えっ!?」
そっ、そそ、それってつまり!?
「藤城さん……?」
ダメだ。
ヤバい、心臓が!
でも、そんな急に言われても!!
どう答えれば……
「あ~っ! ダメだよ彰~抜け駆けは~」
振り向くと富岡先輩が後ろから、私の頭に手を置いて微笑んでいた。
「オレも藤城さん狙ってるんだから~」
富岡先輩の場合、コレが本気か冗談なのかがよくわからない。
「おいっ! 貴様ら、心霊研究部は恋愛禁止だと言ったであろうがっ!」
持明院先輩は、私たちのプロデューサーか何かなのだろうか?
とりあえずなんとか話題を変えたかった私は、違う話にすりかえるという方法を選択した。
だってしょうがない、私はまだまだ恋愛スキルが低いのだから。
「あっ、あの! 山寺先輩」
「なに……?」
「先輩、前に私の写真撮ってましたよね?」
「あ~…っ……うん……撮ったね」
「アレ、見せて下さいよ」
「…………見ない方が……いいと思う」
だが、変えた話題が悪かった。
山寺先輩は突然、顔を青くしてそれっきり俯いてしまったのだ。
「えっ!? なっ、なんでですか!? そんな風に言われたら気になりますよ~」
「…………見ない方がいい」
「ど、どうしてですか~!?」
結局、私には最大の謎を残し『鏡詣り』の検証は終わった。
[鏡詣りの噂]
深夜二時、おばけ階段の上にある鏡の前でカップルが誓いの言葉を述べる儀式を行う。
互いが本当に愛しあっていれば鏡には何も起こらない、だが万が一、どちらかが本当に相手を愛していない時には、血塗れの少女の霊が現れて裏切った方を鏡の中へと連れてゆく。
[検証 済]