時刻は午前0時をまもなく迎えようとしている。

 私達は例の噂を再現するかの如く、深夜の校舎でその時を待っていた。

 ちなみに、こんな状況下でありながら用務員さんと宿直の先生から、深夜の校舎徘徊の許可をあり得ない事に正式にとっている。

 これは、許可というより政治的圧力といった方が近いかもしれないが、なんて事はない持明院先輩の鶴の一声だ。

 富岡先輩曰く「輪ちゃんの名前はこの学校の免罪符だから~」だそうだ。

 時間になると同時に、運動部部室棟のあの階段へと四人で向かった。

「足元、危ないからね今度はオレが手ぇ繋ぐ~」

と、言って軽いノリで私は富岡先輩に手を繋がれエスコートされた。

「…………なら、帰りはオレと繋ごう」

山寺先輩がポツリと言うと、持明院先輩は何故かまたご機嫌ナナメになっていた。


 一度目に来た時はやはり昼間だった事もあって、全く恐怖を感じる事などなかったが、やはり深夜となると辺りは静寂と闇に支配され、別世界に来た様な感覚すら覚える。

 廊下奥の床の扉を開け、ゆっくりと漆黒の世界が広がる地下へと入って行った。

 微かな懐中電灯の灯りだけを頼りに、上へと続く古びた階段を昇る。

 そして、あの鏡のある階段の下へと辿り着いた。

 私達は、懐中電灯で辺りを照らす。

 そこには誰の姿も無い。

「誰も、いませんね」

「フっ、まだ焦る事はない」

 持明院先輩は余裕の笑みだ。山寺先輩は、放送部の部員たちにこう伝えたらしい。

「この前の『鏡詣り』の真相を突き止めた」
と──

 そして、今日の深夜、それを証明する為に
『鏡詣り』をするという事も……。

 しかし、本当にアノ人たちは来るだろうか。

 いささか不安はあったが、念の為に持明院先輩が手撫づけた(蹂躙した)放送部の部員さんにも協力をお願いしたので来るとは思う。

 そう見越して私達は、この場所へとやって来たのだ。

「しっ……何か聞こえる……」

 富岡先輩が人差し指を唇に当てて、耳を澄ませている。

 釣られて私も、静寂と闇の中で僅かな音に耳を澄ました。