放課後。

 部室には既に、持明院先輩、富岡先輩、山寺先輩の姿があった。

 私は空いている席に座ると、先程ねねちゃんから聞いたばかりの話を三人の先輩に聞かせた。

私が先輩達と噂になってるとかは、もちろん伏せておいた。

「フっ、やはりな!」

 持明院先輩が開口一番に、そう声を張り上げた。

「おそらく、その二股をかけていたという部員は、村井で間違いないだろう!」

「さっき……放送部に行って、話を聞いたんだ……」

 なんだか山寺先輩は、酷くお疲れの様だ。

「そのとおり! オレと彰で放送部に殴り込みに行き、同じ様な話を聞いて来たっ!」

「あの……殴り込みじゃなくて、聞き込みじゃないんですか?」

「はっ!? どっちも変わらんだろ?」

「うん……持明院の場合は同じ意味だと思う……」

 山寺先輩が深い深いため息を吐く。

「最初はね……みんな中々話してくれなかったんだけど……、持明院が……一人一人に圧をかけて……」

 そう言われた瞬間、私の脳内再生は余裕だった。

 おそらく、持明院先輩はもの凄い威圧感で、放送部の人達を半分脅迫じみた感じで問い詰めたのだろう。

 もしかしたら、自分の権力をフルに使い、圧力をかけたんだと思う。

 なんせうちの学校は、持明院先輩の支配するデストピアなのだから。

「このオレをダマした罪もあるし、いっそ部活ごと廃部にしてやろうかと思ったが、少し面白い話が聞けたぞ」

 持明院先輩は、まだあの偽・幽霊動画の事を根に持っているらしい。

「面白い話~? なになに~?」

「数日前に、部室で森下と村井の二人がただならぬ雰囲気を醸しだし、話しているのを目撃した部員が何人かいたそうだ!」

「森下さんと村井さんが……」

 やはり……。

 森下さんが二股をかけていた放送部員というのは、村井さんという事なんだろうか?

「はいは~い、オレもプチ情報を入手したよ~」

 そう言って、富岡先輩は元気良く手を上げた。

「運動部系の知り合いから聞いたんだけどね、なんでも堂本さんと村井さんて、小学校の頃からの幼なじみらしいよ」

「そうなんですか?」

「うん! しかも二人はスッゲー仲も良かったとかで、堂本さんに森下君って彼氏が出来るまでは、そりゃもうなんでもいつも一緒だったんだって~」

 つまり、二人は親友だったという事だ。

 そして、その二人を森下さんが二股をかけていた。

 嫉妬した村井さんは、親友だった堂本さんを階段から突き落とし、森下さんは自分の責任もあると感じ、現場を見ているが黙っている。
……という事なのだろうか?

 そう考えれば、あの『どうして?』という言葉の意味も繋がってくる気がする。

 どうして別れてくれないの? とか、そんな感じのセリフなのかもしれない。

 そう推理をしておきながらも、私は一つ、肝心な事に気づいた。

「でも……ここまで調べてなんですけど、私たちは心霊研究部であって、 探偵でも刑事でもないですよね? この後は、どうするんですか?」

「そんなものは決まっている! このオレをダマした罪は償ってもらわないとな!」

「つ、償うって?」

「信実を暴く! この持明院輪サマをダマした事を後悔させてやる!」

「はぁ……?」

「既に許可はもらったよ~」

「うん……もう放送部には伝えたから……」

 富岡先輩と山寺先輩は、持明院先輩の手足となって暗躍していた様だ。

「あの……一体、ナニを?」

 ふいに持明院先輩は、これから悪戯を仕掛ける子供の様な顔をした。

「言ったはずだぞ、必ず倍にして返してやるとな」

 そうして私達四人はその日、放課後の教室で静かにその時を待つ事となった。



 真相が罠に掛かるその時を──