今度は気を取り直して食べたからあげを、思い切り喉に詰まらせた。
「げほっげほっ!!」
「だっ、大丈夫!?」
私は胸を叩き、無理矢理残っていたコーヒー牛乳でからあげを喉に流し込む。
「なっ……なんでそんな事を!?」
「富岡先輩と一緒にいる桃ちゃんを見たって人がいるみたいで……富岡先輩ファンクラブあるぐらい人気あるから……」
やっぱりあるのか富岡先輩ファンクラブ……。
私のカンは正しかった。
「ち、違うよ、えっと、富岡先輩はたまたまその持明院先輩に誘われた部活にいただけでね、付き合うとかそんなんじゃ全っ然! ないから……」
私はしっかりとねねちゃんの肩を掴み、真っ直ぐな瞳で訴えた。
「あっ、う、うんっ、わかったよ~」
「私は、持明院先輩とも富岡先輩とも、付き合ったりなんてしてないよ!」
「う、うん……じゃあ、もしかして……」
「山寺先輩とも付き合って無いよ! 先輩にもその部活で微かに絡んだ程度だから! 知り合い程度の仲だから!!」
本当は手まで繋いでしまったけれど。
「あっ、そ、そっか……うん」
「ね、ねえ、確認なんだけど……もしかして、山寺先輩も有名人なの?」
「う、うん、結構隠れファン多いよ? 山寺先輩のおうちの定食屋さんも、先輩目当てできている他校の女子生徒までいるくらいだし……」
「へっ、へ~……そうなんだ」
もしかして私は、とんでもない人たちと関わってしまったのかもしれない。
ならべく目立たず、質素に生活して行こうとしていた私の高校生活が、僅かに崩れかけて来ている、不穏な空気を感じずにはいられなかった。
「もう他にはいないよね……」
作り笑顔を浮かべながら、冗談まじりにねねちゃんに質問してみる。
「あっ、うん、大丈夫だよ~、あとはこの学校の有名人っていえば森下先輩だけど……」
「森下さん? 放送部の?」
その名前は、私を別の意味でドキリとさせる。
「うん、動画配信とかしてて最近人気があるみたいだけど……」
「だけど……?」
ねねちゃんは言いずらそうに口を濁す。
「うん、これもテニス部の先輩から聞いた話なんだけどね、森下さんて放送部副部長の堂本さんと付き合っているけど、実は、放送部の他の部員の子とも付き合ってるらしいよ」
「えっ!? それって二股?」
「うん……なんか昔から女グセの悪い人で有名だったみたい、最近は動画配信の影響で他校の子との噂も絶えないし……」
「そうなんだ……」
他の放送部員、名前こそ出なかったが、それってもしかして村井さん……?
そういえば、あの『鏡詣り』の話も二股をかけていた人の話だった。
アノ話をしたのは村井さん。
だとしたら、やっぱり……。