翌日の昼休み。

「桃ちゃんとお弁当食べるの、久しぶりな気がするな~」

 私は久々に、クラスのお友達のねねちゃんと、平和なランチタイムを過ごしていた。

 思えば最近、心霊研の活動で朝・昼・放課後と時間を問わず呼び出され、平穏な学生生活が送れずにいたのだ。

「部活忙しそうだもんね~、桃香ちゃんは結局何部に入ったの?」

 私はその質問に反射的に何故か身構えてしまった。

 そして、頭の中をフル稼動させて、思いつく限りの良い言い回しを考えた。

「えっと……なんかこう身の回りにある科学という概念を超えた事象を、分析したり研究したりするとこなんだけど……」

 自分で言ってなんなのだが、これでは怪しい秘密機関か営利団体の様だ。

「へぇ~……なんか難しそうだね~」

 しかし、可愛いねねちゃんは、よくわからない! といった感じで今日も愛らしく、もぐもぐとお弁当を食べている。

 とりあえず、心霊という答えに至らなかったなら問題は無い。

「ねねちゃんは? 部活どうしたの? 吹奏楽とテニスで迷ってたよね? ……結局、見学一緒に行けなくてゴメンね?」

「ううんっ、いいよ~。今度帰りにアイス奢ってくれたらね!」

「もちろん、奢る奢る!」

 今、この瞬間だけ、私は普通の女子高生だと心底思えた。

「私、テニス部に入ったんだよ~」

「テニス部か~、練習大変?」

「うん、そうだね~練習毎日、朝夕あるし。部室の朝の掃除は新入生の役割だから、早起きしなくちゃいけないし」

「そっか~大変なんだね」

 私と違い、ねねちゃんは真っ当な青春を送っているようだ。

「あっ、そういえば桃ちゃん……」

「んっ? 何?」

「桃ちゃんて……持明院先輩と付き合ってるの?」


「ブ──────っ!!」

 思わず口の中のコーヒー牛乳を盛大に吹いてしまった。

「なっ、なっなななな、なんで!?」

「あっ……ごめんね急に、なんかテニス部の先輩に聞かれて……」

「無いよ! 絶対に無いから!!」

「そ、そうなんだ、なんかね、持明院先輩が桃ちゃんを連れて歩いてるトコが目撃されてたみたいで……」

 恐らく、一番最初に部室に連れて行かれたアノ時の事だろう。

「ほら、持明院先輩ってスゴい有名人だから……なんせ理事長のお孫さんでカナリのイケメンだし、高嶺の花っていうか憧れている女子生徒も多いし……」

「あっ、あはは、そうなんだ~」

 中身はとんでもない人なんだけど……。

「持明院先輩に部活の勧誘されただけなんだ、わ、私、帰宅部で部活見学にも行ってなかったから~その、先生から先輩が頼まれたみたいで……」

「そっか~……」

 なんとなく無理矢理だが、とりあえず心霊研の事はごまかせただろう。

「じゃ、じゃあ、もしかして……富岡先輩と付き合ってる……とか?」

「へぁっ!? ゲフっ!!」