山寺先輩は持っていた一眼レフカメラのディスプレイを私たちに見せた。
「写真……ですか?」
それは、恐らく一番最初に森下さんと村井さんを撮影したものだ。
「はっ!? なんだ? この写真がどうかしたのか?」
「……持明院先輩、コレ見えないんですか?」
「はっ? なんだ?」
そこには、ぼんやりと写る森下さんと村井さんよりくっきりはっきりと、灰色の人の顔の様なものが村井さんに覆い被さる様に写っていた。
「本当に……ゼロ感なんだ」
私は妙に納得する。
写真に写るそれを見た私の背筋を冷たい汗が伝い、頭の中に鈍痛を覚えさせるほどその写真には強い霊気を感じた。
「それで……コッチはこの前の写真……」
二枚目の写真は、アノ鏡とブレているが恐らく持明院先輩が写っている。
だが、この写真には噂の鏡が写っているのに何も感じない。
ただのピンボケ写真なだけだ。
「つまり、あの鏡には何もいないって事でしょうか?」
「だと思う……」
「どちらかといえば……この写真、問題なのは森下くんの方かもね……」
「森下さんの方……ですか?」
「うん……あっ、コレが……堂本さん……」
そう言って山寺先輩が取り出したのは、放送部で撮影したと見られる一枚の写真だった。
「コレ……って」
そう。
村井さんに覆い被さる灰色の顔は、堂本さんだった。
「でも~、この顔が堂本さんだとして~彼女死んでないよね~」
富岡先輩にもこの写真の顔は見えているらしい。
「はっ? 顔? どこに顔があるんだ?」
そして、持明院先輩にはやっぱり見えていないみたいだ。
「でも……コレは堂本さんだと思います」
「じゃあ、もしかしてこれは堂本さんの生き霊ってこと~?」
私は頷いた。
こんなにはっきり写っている心霊写真は初めてだが、この強い霊気は生きている人間にカナリ近い。
生き霊は、生きている人間が強い思いのある場所や相手の元に霊体となって現れると言われている現象だ。
「この写真……村井さんの上に顔があるけど、その視線の先にいるのは……」
「森下さん……?」
「そう……」
確かに、灰色の顔は森下さんを睨みつけている様にも見える。
「どういう事? 堂本さんが恨んでるのは村井さんじゃないって事?」
「さあ……そこまではわかりませんが、彼女が村井さんと森下さんの二人に何か言いたい事があるのは確かだと思います」
「どっちにしろ……もう少し調べてみる必要はあると思う……」
「だね~、というワケで輪ちゃん、今日のところはまだ静かにしてようね」
「フンっ!」
勢いよく立ち上がり、どこかへ行こうとしている持明院先輩を富岡先輩は一言でなだめた。
恐らく森下さんの所へ行こうとしていたのだろう。
「だがな、この持明院輪を騙そうとした罪は重い……クククっ……必ず何倍にもして返してやるからな!」
未だ、ニセモノの霊の声で踊らされていた事が悔しいらしい。
「ところで……山寺先輩」
「ナニ……?」
「先輩の写真、これとかどちらかというと、霊の方にピントが合ってる気がするんですけど、先輩も、もしかして霊が見えるんですか?」
森下さんと村井さんと共に写る、グレーの顔がはっきりと現れた写真を私は指摘した。
「いや……見えないよ」
「あ~っ、あのね~桃ちゃん、彰はね心霊写真専門なんだよ」
「心霊写真専門?」
「そう、他のはブレててほとんど何が写ってるかわからない写真しか撮れないんだけど~、霊だけはねハッキリ写せるんだよね~」
「はぁっ!?」
「見えないけど……写真で写せるだけだから……」
「そ、それって……」
持明院先輩はなんだかんだで、スゴい霊感の持ち主を部に入れてるという事だ。
「でも、輪ちゃんにはどんなにハッキリ霊が写っていても見えないんだけどね~」
「まったく……意味がない……」
「ですね……」
「どこに顔があるんだ? 全くわからん」
ただただ首を傾げ、持明院先輩はディスプレイを凝視する。
私達は、明日もう一度放送部の部員達に詳しい話を聞きに行く事にして、その日の部活を終えた。
「写真……ですか?」
それは、恐らく一番最初に森下さんと村井さんを撮影したものだ。
「はっ!? なんだ? この写真がどうかしたのか?」
「……持明院先輩、コレ見えないんですか?」
「はっ? なんだ?」
そこには、ぼんやりと写る森下さんと村井さんよりくっきりはっきりと、灰色の人の顔の様なものが村井さんに覆い被さる様に写っていた。
「本当に……ゼロ感なんだ」
私は妙に納得する。
写真に写るそれを見た私の背筋を冷たい汗が伝い、頭の中に鈍痛を覚えさせるほどその写真には強い霊気を感じた。
「それで……コッチはこの前の写真……」
二枚目の写真は、アノ鏡とブレているが恐らく持明院先輩が写っている。
だが、この写真には噂の鏡が写っているのに何も感じない。
ただのピンボケ写真なだけだ。
「つまり、あの鏡には何もいないって事でしょうか?」
「だと思う……」
「どちらかといえば……この写真、問題なのは森下くんの方かもね……」
「森下さんの方……ですか?」
「うん……あっ、コレが……堂本さん……」
そう言って山寺先輩が取り出したのは、放送部で撮影したと見られる一枚の写真だった。
「コレ……って」
そう。
村井さんに覆い被さる灰色の顔は、堂本さんだった。
「でも~、この顔が堂本さんだとして~彼女死んでないよね~」
富岡先輩にもこの写真の顔は見えているらしい。
「はっ? 顔? どこに顔があるんだ?」
そして、持明院先輩にはやっぱり見えていないみたいだ。
「でも……コレは堂本さんだと思います」
「じゃあ、もしかしてこれは堂本さんの生き霊ってこと~?」
私は頷いた。
こんなにはっきり写っている心霊写真は初めてだが、この強い霊気は生きている人間にカナリ近い。
生き霊は、生きている人間が強い思いのある場所や相手の元に霊体となって現れると言われている現象だ。
「この写真……村井さんの上に顔があるけど、その視線の先にいるのは……」
「森下さん……?」
「そう……」
確かに、灰色の顔は森下さんを睨みつけている様にも見える。
「どういう事? 堂本さんが恨んでるのは村井さんじゃないって事?」
「さあ……そこまではわかりませんが、彼女が村井さんと森下さんの二人に何か言いたい事があるのは確かだと思います」
「どっちにしろ……もう少し調べてみる必要はあると思う……」
「だね~、というワケで輪ちゃん、今日のところはまだ静かにしてようね」
「フンっ!」
勢いよく立ち上がり、どこかへ行こうとしている持明院先輩を富岡先輩は一言でなだめた。
恐らく森下さんの所へ行こうとしていたのだろう。
「だがな、この持明院輪を騙そうとした罪は重い……クククっ……必ず何倍にもして返してやるからな!」
未だ、ニセモノの霊の声で踊らされていた事が悔しいらしい。
「ところで……山寺先輩」
「ナニ……?」
「先輩の写真、これとかどちらかというと、霊の方にピントが合ってる気がするんですけど、先輩も、もしかして霊が見えるんですか?」
森下さんと村井さんと共に写る、グレーの顔がはっきりと現れた写真を私は指摘した。
「いや……見えないよ」
「あ~っ、あのね~桃ちゃん、彰はね心霊写真専門なんだよ」
「心霊写真専門?」
「そう、他のはブレててほとんど何が写ってるかわからない写真しか撮れないんだけど~、霊だけはねハッキリ写せるんだよね~」
「はぁっ!?」
「見えないけど……写真で写せるだけだから……」
「そ、それって……」
持明院先輩はなんだかんだで、スゴい霊感の持ち主を部に入れてるという事だ。
「でも、輪ちゃんにはどんなにハッキリ霊が写っていても見えないんだけどね~」
「まったく……意味がない……」
「ですね……」
「どこに顔があるんだ? 全くわからん」
ただただ首を傾げ、持明院先輩はディスプレイを凝視する。
私達は、明日もう一度放送部の部員達に詳しい話を聞きに行く事にして、その日の部活を終えた。