「あの~、持明院先輩、先輩はネットのなんとか板とかいうのをよく観てるんですよね? それなのに、そういうのをよく知らないんですか?」

「あ~っ……あのね桃ちゃん、輪ちゃん実はネット関係全っ然わかんないんだよ~」

「はっ!?」

「全然ではない! これを起動させる事は出来るぞ!」

持明院先輩は胸を張って主張していた。

「えっ? それならどうしてそのネットの掲示板を見て……」

「オレがね、そこだけはすぐ見れるように設定してあげてるんだ~」

 確かに、開いてあるPC画面にはそこだけわかりやすくデスクトップに表示がされている。

「輪ちゃん、そのサイト見てればとりあえずおとなしくしてくれるから~」

 こそっと富岡先輩は呟いた。

 私は思わずなるほど、と深く頷く。

「ほら、何をしているマサキ? いいから早く動画を再生しろ」

「りょうか~い」

 富岡先輩が再び動画を再生させ、私もそれを一緒に観るため近くの椅子へと座った。

 画像は酷く荒れている。

 ノイズと衣擦れの音がようやく落ち着くと、ぼんやりとした暗闇の中に人影が見えた。



『どうしたの……千佳(ちか)?』


 千佳というのは村井さんの名前だ。

 という事は、この声は堂本さん?



『…………ゅ…………る』



『なに!? なんか言った?』

『オレは、なにも…………』

 怯える堂本さんの声と、森下さんの声が聞こえる。



『ゆ……る……サ……ナ……イ……っ……』



 昨日、私たちが聞いたのと同じ声だ。

 しかし、これにも私は何も感じなかった。


『二人とも……うしろにっ…………』


 これは、村井さんの声だ。


『にっ、逃げよう!!』


 森下さんが叫んで、カメラが大きく動く。


 その直後──


『愛!!』

『キャァァァァァァァァ────!!』

 何か重たいものが落ちる音。

 そして、ノイズと雑音がして動画は終わった。

「……あの、今の所をもう一度見せてもらえますか?」

 心霊的なものは、やはり感じなかった。

 でも、一つ気がかりな事があった。

 聞き間違い? いや確かに聞こえた。

 動画をもう一度再生する。
 
場面は森下さんが叫んだところだ。



『にっ、逃げよう!!』

『愛!!』

 村井さんが堂本さんの名前を呼んで、数秒後。


『……し……て』


 小さな声で呟くように誰かが言っている。

 もう一度、同じ所を再生してみた。


『……ど……うし……て』

 どうして──?

 確かにそう聞こえた。

 コレは一体、どういう意味だろう?