通路はひんやりとしていて、確かにムードだけは満載だ。
足下がおぼつかないが、山寺先輩が手を握ってくれていたので私は転ばずに暗闇の中を歩く事が出来た。
昼間でもやはり地下は暗い。二本の懐中電灯の僅かな光だけが頼りだった。
「祖父曰く、ここは以前、非常食の貯蓄庫としても使っていたそうだ」
持妙院先輩が懐中電灯でぐるりと辺りに光を当てると、古くなった段ボールがうず高く積まれホコリを被っていた。
「藤城さん……何か感じる?」
ふいに山寺先輩が後ろを振り返って私に尋ねて来た。
「いっ、いえいえ、全く何も……」
私は片手を大袈裟なくらいに振って答えた。
「そう……」
私のその答えに、山寺先輩は何かを考え込んでいる様子だった。
恐らく、さっきのカンだと言っていた事かもしれない。
確かに、私自身もなんとなくだが気付いていた。自分の霊感には少なからずの自信がある。
その私が、一切何もココには感じないのだ。
「階段に辿り着けば、何か感じるかもしれないぞ?」
持明院先輩はなんとしても、霊と遭遇したいらしい。
「この上だね」
小さな木製の階段を山寺先輩は懐中電灯で照らした。
私達は腐りかけたその階段を踏み外さないよう登ってゆき、やがて上へと出る事が出来た。
目の前には、さっきのものよりずっと立派な階段があった。
どこに続いているのかは、検討が付かないが、どうやら上の方に小さな窓があるらしく、微かな陽の光が射し込んできている。
「これじゃ、夜はココ真っ暗だろうね~」
「でっ!? 藤城! ここに霊はいるか?」
持明院先輩が待ってました! とばかりに、興奮気味に聞いて来た。
「いいえ、何も感じないです」
私は首を横に振る。
「じゃあっ、あの話はやっぱりデマだったって事かね~」
そして、階段の終わりが見えた時、ようやく私たちの前に件の鏡があった。
「あっ! アレだな! 噂の鏡というのは」
すぐに目当てのモノを見つけて、持明院先輩は足早に鏡に近づいて行く。
「ちょっと! 輪ちゃん!」
その後を富岡先輩、そして山寺先輩と私が続いた。