そうして、私と山寺先輩は村井さん達のいるという視聴覚室へと向かった。

「ここですね」

「動画放送の前の空き時間に取材する時間をくれるって……」

 既に教室の周りには、女子生徒を中心に人だかりが出来始めていた。

「本当に人気なんですね」

 教室内を覗くと、中には茶髪の派手な感じの男子生徒を中心に、数人の生徒たちがいる。

ちょうどその時、教室内から一人の女子生徒が出て来たので、山寺先輩は彼女に声をかけた。

 リボン帯の色から、彼女は私と同じ一年生の様だ。

「ねえ……森下君、呼んでもらえないかな……?」

「あっ、は、はい、森下さん!」

 突然声をかけられて驚いたのか、それとも突然のイケメンの登場に動揺したのかはわからないが、赤面しながらあたふたとして彼女は後ろにいる例の茶髪男子に声をかけた。

 人の輪の真ん中で楽しそうにしゃべっていた彼は気付いて、コチラに向かって手で入って来るよう促してくる。

「新聞部!? 取材でしょ! オッケーオッケー、じゃんじゃん聞いてよ、写真もオッケーだから」

 見た目通りの軽い感じの人だった。

 茶髪にピアス、制服のシャツのボタンを胸の真ん中まで開けている。

 おそらく、私があまり普段お近づきになりたくないタイプの人だ。

「えっと、アレだよね? この前の鏡の怪談の話、アレね~視聴数やばかったからさ~、ネット掲示板でも話題になって、まとめサイトにまで載っけられちゃってね、学校側から色々言われて動画下げる騒動にまでなってさ~大変だったよ」

 そう言うワリに森下さんは、どこか自慢気で嬉しそうだ。

まるで自分の手柄をひけらかしている様な、悪びれた様子は一切ない。


「……それで、幽霊には本当に会ったの……?」

 そんなイキナリ確信をついた質問!?

 山寺先輩は無表情でド直球な質問を森下さんに投げつけた。

「アハハ、やっぱそこ? まぁ、疑われてもしょうがないよね~」

 森下さんのあっけらかんとした反応に、私は思わず拍子抜けする。

 てっきり怒られるものかと思ったからだ。

「アノ動画じゃ仕方ないとは思うよ、なんせ映像では幽霊の姿を捕らえられなかったワケだからね」

「えっ? どういう事です? 確かあの怪談の中では少女の幽霊を見たっって言ってましたよね?」

 私は思わず山寺先輩の方を見てしまった

「音声……彼の動画には声が入っているだけだよ」

「声? ですか?」