C子のスマホを持つ手が、ガタガタと震えている。


 そして──


「…………ゅ…………る」

「なに!? なんか言った?」

「オレは、なにも…………」

「ゆ……る……サ……ナ……イ……っ……」


 AとB子の耳には、そう確かに声が聞こえた。

「二人とも……うしろにっ…………」


 震えるC子の指さす先、ゆっくりと後ろを向いてみると──


「ひっ!!」

「うわぁっ!!」

 そこで、二人は見た。


 鏡に映る、血みどろの少女の姿を…………。

「にっ、逃げよう!!」

 Aは叫んだ。

 しかし、その時鏡からスーッと伸びた白い手がB子の背中を押し、そのまま彼女は階下へと転がり落ちてしまった。

「B子!!」

「キャァァァァァァァァ────!!」

 C子の悲鳴が階段に響く。

 階段から落ちたB子の姿は、血塗れの鏡の少女の姿と瓜二つだった…………。

 それを見た少女の霊は微笑みを浮かべたまま、スーっと消えていったという──





「よーしっ!! 行くぞっ!!」

「…………!! ちょっ、ちょっと、持明院先輩止めて下さい、急にそんな大声出すの!」

「フフフっ、まさかそんな楽しい心霊スポットが校内にあるなんてなっ! ぬかっていたわ! 今すぐ凸(とつ)するぞ! 心霊マニアの名がすたる!」

「とつ……?」

「突入って事らしいよ~」

 富岡先輩が慣れた感じで解説しながら、手元に置いてあったスポドリをまたガブ飲みした。

「まっ、でも夜中にいきなり無許可で学校に忍び込むっていうのは~、いくら輪ちゃんでもマズイんじゃないの~?」

 富岡先輩の心配をよそに、持明院先輩は鼻をフンと鳴らして机にドカッと足を乗せる。

 その姿はまるで独裁者そのものだ。

「マサキ、オレがなんの為に、理事長の孫なんてやっていると思ってるんだ?」

 いやっ、貴方が理事長先生の孫にたまたま産まれた。
ただ、それだけだと思います。

「この学園の中で、オレに逆らえる教師や生徒なんていないんだ! 好き放題、し放題だぁ!」

 やっぱりとんだ独裁者でした、持明院先輩。

「あの、まさかとは思いますが、今日、そのトツとやらを先輩はするつもりなんですか?」

「当たり前だろ? 何事も思い立ったが吉日というだろう」

 やはりそうか。

 でも、私は今日だけは絶対に家に帰らなければいけないのだ。

 ナニがあっても絶対に!!