プロローグ

 8がつ5か(木)

 きょうは、クラスのみんなで、きもだめしに行きました。
 
だいくんが近所にある、人がだれもすんでいない家におばけが出るときいて、みんなで行ってみることにしました。

「おいっ、こっちだぞ!」

「コワイよ~……」

「もしお化けが出たら、オレはやっつけてやる!」

「もしつかまえたらオレ達、テレビとか出れるかもよっ!?」

 クラスのみんなとそんなことをいいいながら、『おばけやしき』といわれている空き家のまえに着きました。

「桃香ちゃ~ん、コワイね~」
 
クラスで一番仲良しのサキちゃんが、私にそういってしがみついてきました。

「よ~し、みんな入るぞ~っ!」

 空き家は、おんぼろで今にもくずれそうでした。

お庭の草もボーボーで、玄関のドアはこわれています。
 
カベには、落書きが沢山されていました。

「え~っ……こんな所、本当に入るの~?」

「怖いヤツは、外で待ってろよ!」

「面白そうだな、早く入ろうぜ!」

 みんなカイチュー電灯を手にもって、中に入っていきました。


おうちの中は家具も食器もそのままで、ゴミやかれ葉が積もっています。

「ここって、なにがあったの?」

「なんでも、噂によると家族がここでみんな殺されたらしいぞ?」

「オレが聞いたのは、女の人が自殺したって噂だよ?」



 ホントウのことはしらないけど、ともかくそんなウワサがそのおうちにはありました。


「やっぱなんも無いな~」

「つまんないから、もう帰ろうぜ~……」


 30分くらい、空き家を歩き回ったけど、特に変わったこともなかったので、みんなが帰ろうとしたー


 その時。


 私のからだじゅう、背中からつまさきまで、鳥肌が一気にボボボボっ……とひろがっていったのです。


 ソレは……


 寒さと、よくわからないコワイモノの気配でした。

「帰ろうぜ~」

「なんだよ、幽霊見たかったのにな~」

 玄関へと向かうみんなの背中に、私は元気よく声をかけました。

「みんな~! 幽霊いっぱい、いたよ~!!」

「ギャ──────っ!!」

「ひいぃぃぃっ!!」

「お母さ~んっ!!」

 クラスのみんなは、いっせいに逃げ出してしまいました。
 
                     


  3年1組 藤城 桃香(フジシロ モモカ)




 そのとき満面の笑顔で手を振る私の背後に、沢山のこの世のモノでない人々がいたと……、その後、私はみんなから聞いた。


 物心ついた時から、私はそういった霊的なものを呼び寄せ、見えてしまう体質だったのだ。