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時が経つのはあまりにも早くて、

美樹があまり家に来なくなってから三年後の冬、
時雨は有名な私立中学校に合格した。

美樹はもう、中学一年生だった。

時雨はそのことを早く美樹に報告したくて
美樹の家へと急いだ。

美樹の家へ来るのはすごく久しぶりで、
懐かしい香りがした。

美樹は部屋にいるそうで、
階段を上ってすぐのところにある
美樹の部屋のドアをコンコンコンッと叩いた。

中からは返事は返ってこなかった。

「美樹、俺。開けるよ。」

そう言ってドアを開けると、
美樹はまだ夕方だというのに
ベッドで眠っていた。

スースーと美樹の寝息が聞こえて、
時雨は愛おしい気持ちになった。

時雨は美樹のそばまで来て座って、
幹の頬にそっと手を置いた。

しばらくじっと、時雨は美樹を見つめていた。

美樹の長くてふさふさしたまつげを
指で触ったら、
美樹はビクッとして目を開けたが、

「な〜んだ時雨か〜」

と言ってまた眠ってしまった。
そんな美樹を見て、時雨はクスクスっと笑った。


結局美樹は起きなくて、
時雨は置き手紙を残して部屋を出た。