時雨が最後のコンサートに選んだのは、

C・ドビュッシーのラベガマスク組曲
第三章〝月の光”。


ドビュッシーが28歳頃に作曲したこの曲は
もともと、当時執心していた人妻に贈った
歌曲であった。


“君の心の風景は独創的な絵のようだ
魅惑の仮面行列が行進し
横笛を吹き踊る人が描かれているが
画面の下には悲しそうな表情がある”


楽しくも、そして悲しくもある
曖昧な世界が描かれたこの詩を、
ドビュッシーは言葉を使わず、
ピアノだけで表現した。