パニックになって幽斗君の言っている意味がさっぱりわからない。

「夢花」

突然真剣な口調で名前を呼ばれ、私は抵抗するのをやめた。

「……?」

不安な表情を向ける私に、幽斗君はまたキスをする。

「愛してるよ」

嘘偽りのない、心からの言葉だ。

あ――。

背中の方から胸へかけて、ジンワリと暖かくなる。

『愛してるよ』

「それが……ほしかったの」

私は無意識のうちにそう呟いていた。

いや、この言葉は私ではなく、私の口を借りて熊が言ったのかもしれない。

さっきまでの涙は嘘のように止まり、ポッカリとあいた寂しさの穴には花が咲いた。

「大丈夫か?」

「うん……。大丈夫」

頷くと、幽斗君はクスリと笑った。

「まだ、ダメだ」

へ?

「熊が憑いてる」

え――?

私は目を見開く。

暖かな胸に聞いてみても、もう熊の生霊は満たされていなくなているに違いない。

それに……。

幽斗君の目は、私の背後を見ては居ない。