「どっから拾ってきたんだよ。こんな巨大な熊の霊を」

呆れながら、幽斗君は私の後ろにいるのであろう熊を眺める。

「く……ま?」

「あぁ。体平気なのか?」

そう聞いてくる幽斗君に、私は頷く。

重く腰が曲がるような感覚は全くない。

私は流れ出す涙をぬぐいつつ、「見間違いじゃないの?」と、言った。

幽斗君は私と後ろの熊を交互に見比べつつ、「そういうことか」と、自分ひとりだけ理解したように頷いた。

そういうことって、どういうことよ?

そう聞く前に、鼻水をすすりあげた。

「この霊は孤独なんだ」

「孤独……?」

依然として流れる涙。

いくらなんでも泣きすぎだ。

なのに、なぜかわからないけどとまらない。

「幼い頃母親と死に別れ、そのまま成長した生霊だな」

生霊!?

生きながらに強すぎる気持ちを持っていると、それが体を抜け出してしまう事がある。

それが、生霊。

「この熊の強い孤独感と、お前の寂しさの波長が合ったんだな。それで磁石のようにお前にひっついてるわけだ」

「なん……で、また、私……なのよ」

時折シャクリあげながら質問すると、「霊感が強いからだ」と、即答された。

「じゃぁ……はや、く。じょれ……い……して、よ!!」

「ふむ……」

幽斗君は難しい表情で腕組みをして、私を見つめる。

なに?

悲しすぎて、もう声も出なくなる。

ただうるんだ瞳で幽斗君を見つめるしか出来ない。

すると、幽斗君は厳しい表情のまま、私の体を抱きしめてきた。

いつものように、お香の匂いが鼻をくすぐる。

あぁ……。

これで大丈夫。