私の除霊が成功してから数日が経過していた。

もう幽斗君の家にいる必要もなくなって、お母さんに『憑けていた』霊もお香だけで消えて行ったそうだ。

なにもかも元通り。

これで私も猫の夢にうなされることもなく、安心に眠りにつける。

なのに……。

なんだろう?

この寂しさは。

私は部屋で荷物をまとめながら、ほんの数日しかいなかった部屋を見回した。

なんとなく立ち上がり、一例する。

「お世話になりましたっ!!」

もう二度と来ないわけじゃないと思うけど、そんな挨拶をする。

幽斗君となら、また毎日学校で会える。

グスッと鼻水をすすり、涙をこらえる。

なに泣いてるんだろ、私。

この非現実的なことから抜け出せるのだから、幸せなはずなのに。

「うぅ~っ……」

『泣きたいだけ泣け』

幽斗君のあの言葉を思い出すと、余計に涙が溢れ出す。

いやだよ。

ずっとここにいたい。

ずっと、2人でいたい。

そう思ったときだった。

「夢花?」

ノックもせずに、幽斗君が入ってきたのは。

私は慌てて涙をぬぐい、荷物を手に取る。

「車、準備できた!?」

無駄にでかい声で鼻声をかくす。

「お前……」

「なに? ほら、早く行くよ。お母さんたち待ってるし」

寂しさを振り払うように大股で歩き出す私を、幽斗君の手が止めた。

「お前……」

「なによ?」

「憑いてる」

へ――?

私はキョトンとして涙目をパチクリした。