今までだって忘れていたわけじゃない。

忘れたかったから、黙ってたんだ。

自分の本心に気づかないふりをしてたんだ。

だから、今までミィちゃんの命日にあの場所へ向かう事もなかった。

でも……。

ミィちゃんの体をこの手で救い上げた今は……。

もう、逃げないからね――。

☆☆☆

それから私たちはお手伝いさんの運転で、私の記憶にある懐かしい場所へと移動していた。

今はすっかり姿を変え、あの忌々しい用水路もなくなった。

「ここ……」

私は裏路地の一角で足を止めた。

背中がピリピリと痛み、熱がこもる。

私を守ってくれているミィちゃんが、何か反応を起こしているのかもしれない。

「ここであってるのか」

そこはどこからどう見てもただの通路でしかなくて、空き缶やゴミが散らばっている。

「間違いないよ。ここは昔用水路だった」

力強く頷くと、幽斗君は腕まくりをし、ゴミを片付け始めた。

それを見て、慌ててお手伝いさんも駆け寄り手伝い始める。

そっか。

そうだよね。

もうあの場所はなくなったけど、このままじゃお線香も立てられない。

そう言うことで、私たち3人はゴミ掃除を始めたのだった……。