私は自分の体を支えきれず、そのままズルズルと床へ座り込んでしまった。

「大丈夫か?」

軽く息を切らした幽斗君が私の体を支えながら、覗き込んでくる。

その額にはジットリと汗がにじみ出ていて、今まで頑張ってくれていたのだとわかった。

「大丈夫」

か細い声でそう答え、自分の両手を見つめる。

「この手に抱いて、水面まで連れて行ってあげたから……」

「水面……? そうか、だから息苦しそうにあえいでたのか」

幽斗君は呟くようにそう言い、頷いた。

それから私の頭をポンッと叩き、「頑張ったな」と微笑む。

「私……」

「うん?」

「私に、猫はもうついてないの?」

そうだとすると、なんだか胸の奥が苦しさに包まれる。

なにも出来なかった。

助ける事も、気づく事もできなかった、幼い頃の自分。

ミィちゃんは何も悪くないのに――。

「ついてる」

へ!?

その言葉に私はギョッと目を見開いた。

「でも、除霊は終わったんだよね?」

「あぁ、終わった」

「じゃぁ、失敗したって事!?」

幽斗君はその言葉に無言まま首をふり、「違う」と一言いった。

「それって、どういう――?」

「知ってるか?」

「え?」

「お前の守護霊は猫だ」

猫――?

私は目を大きく見開く。

「小さくて死んだ黒猫?」

私が聞くと、幽斗君はまた無言のまま頷いた。