にゃぁお。

にゃぁお。

猫の鳴き声が、今微かに聞こえた気がした。

私は立ち止まり、辺りを見回す。

しかし、どこにも姿はない。

首をかしげ、また歩き出そうとして――。

今度は、ハッキリと聞こえた。

それは猫の鳴き声ではない。

人、だ――。

稲がザワザワと揺れてざわめき、私のスカートをフワリと風が揺らして行った。

「あのとき……?」

私は、つい今しがた聞こえた声に向けて口を開いた。

『あの時は、そうやって立ち止まらなかった』

確かに、そう聞こえてきたのだ。

「あのときって……?」

聞きながら、グルリを回りを見渡してみる。

やっぱり、誰もいない。

でも、恐怖心はない。

『私だよ、覚えてない?』

声が次に言ったのはそれだった

誰……?

私とあなたは出会った事があるの?

『あるよ、遠い遠い昔にね』

遠い昔に――?

私は、微かに聞き覚えがあると感じるその声に耳をすませた。

『最も、私は言葉を話せなかったけど』

言葉を……?

その瞬間、私は電気が走ったように記憶を呼び戻していた。

あ……。

あ――!!

「あなた、ミィちゃん!?」

見えない相手へ向けて驚きの声を上げる。

すると、クスクスと笑う声のあと、『そうよ』と、肯定の返事があった。

「ミィちゃん!! どこにいるの? 姿を見せて? 会いたいわ!」

天に向けてそう叫ぶ。