Hugして治して

にゃぁお!

にゃぁお!!

にゃあお!!!

徐々に強く大きくなる鳴き声に、私は両耳を塞いだ。

無駄な抵抗だということもわすれ、イヤイヤと首を振る。

やめて――!!

体を、空気を、大地を揺らがす声。

どうして?

なんでなの?

「なんで私なのよっ!!!」

強く目を瞑りそう怒鳴った瞬間――。

鳴き声は消え、大地は静けさを取り戻していた。

私はそっと目を開け、そして唖然とした。

そこにあったのは暗闇ではない。

水槽でもない。

恐ろしい猫の屍でもない。

懐かしい、通学路。

小学生の頃だ。

列になって学校へ向かった通学路。

あの頃、まわりは田んぼにかこまれていて、それは四季折々の顔を見せてくれていた。

それはいつのときだろう?

稲穂がコウベを垂れていたから、きっと秋へ向かう途中だったハズ。

学校が終わり、私はいつものようにその道を歩いていた。

両方を田んぼや畑にはさまれた道。

今ではそのどれもが姿を消し、ただのノッペリのした駐車場や大きなスーパーなどが出来ていた。

道も今までの開放感を失い、ただの薄暗い裏路地になっている。

小学生へ姿を変えた私は、その道をかけていく。

おなかがすいた。

今日のご飯はなにかな?

6時間目に体育の授業があったから、いつも以上の空腹感。

いつ、どんな授業を受けたかなんて記憶していないのに、まるで時間をさかのぼってしまったようにソレは思い出された。

算数の教科書を忘れてきたこと。

朝のホームルームで前の席の男の子が気分を悪くし、保健室へ連れて行かれたこと。

まるで、本当についさっき自分が経験したことのように、鮮明に思い出す。

この異様な空間にいても、私に恐怖心はなかった。

見慣れた懐かしい風景。

それらにまた出会えた事のほうが嬉しかった。

でも……。