「どこに行くの?」
教室を出てすぐに授業開始のチャイムが鳴った。
早足に歩いていく幽斗君は返事をしてくれない。
職員室から一番遠い階段を通り、一階へ下りるとそのまま旧校舎へ向けて歩き出す。
「ちょっと……ねぇってば!!」
理由も聞かされない私は足がもつれないようについていくことで精一杯だ。
そして、ようやく幽斗君が立ち止まったのは旧校舎の一番奥にある教室に入ってからだった。
「なに……よ」
多少息をきらしながら、文句を言う。
しかし、幽斗君は真剣そのものの表情だ。
それに、その目は私を見てはいない。
私の後ろの、何かを見ている。
「どうしたの?」
その表情からただ事ではないことが伺える。
私は一瞬背筋に寒気を覚え、幽斗君を見つめた。
「夢花……」
「なに?」
「お前、体はなんともないのか?」
「体? 別に、なんとも」
幽斗君と一緒に暮らし始めてからずっと調子がいい。
あの夢だって見ることがないんだから、私はすっかり安心していた。
「悪化してる……」
「え?」
「お前に憑いてる霊の数だよ。日に日に増えてる」
え――?
その言葉に、私は目を見開く。
増えてる――?
「な……んで? だって、体とか私全然平気だよ?」
言いながらも声が震える。
「それは俺と一緒にいるからだ」
「そうだよね。あのお香の香りのお陰だよね」
教室を出てすぐに授業開始のチャイムが鳴った。
早足に歩いていく幽斗君は返事をしてくれない。
職員室から一番遠い階段を通り、一階へ下りるとそのまま旧校舎へ向けて歩き出す。
「ちょっと……ねぇってば!!」
理由も聞かされない私は足がもつれないようについていくことで精一杯だ。
そして、ようやく幽斗君が立ち止まったのは旧校舎の一番奥にある教室に入ってからだった。
「なに……よ」
多少息をきらしながら、文句を言う。
しかし、幽斗君は真剣そのものの表情だ。
それに、その目は私を見てはいない。
私の後ろの、何かを見ている。
「どうしたの?」
その表情からただ事ではないことが伺える。
私は一瞬背筋に寒気を覚え、幽斗君を見つめた。
「夢花……」
「なに?」
「お前、体はなんともないのか?」
「体? 別に、なんとも」
幽斗君と一緒に暮らし始めてからずっと調子がいい。
あの夢だって見ることがないんだから、私はすっかり安心していた。
「悪化してる……」
「え?」
「お前に憑いてる霊の数だよ。日に日に増えてる」
え――?
その言葉に、私は目を見開く。
増えてる――?
「な……んで? だって、体とか私全然平気だよ?」
言いながらも声が震える。
「それは俺と一緒にいるからだ」
「そうだよね。あのお香の香りのお陰だよね」