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「そりゃぁさ、事情を知らない人が今の夢花見たら驚くのは当然」

そう言って、咲弥はポリポリとポッキーを食べた。

「そっか……」

いつもよりもうんと老けていることをすっかり忘れていた。

それなら幽斗君の驚いた顔も充分に理解できる。

顔になにかついている。

なんてレベルじゃないもんね。

「それにしてもさ、新入生暗いよね」

そっと、私に耳打ちする。

うん。

私も思った。

「まぁ、新しい学校に自分だけ遅れて入学だもんねぇ、仕方ないとも思うけど……」

そう言いながら、私はそっと幽斗くんの方を見る。

彼の前には雪斗君が立っていて色々とはなしかけているけれど、幽斗君の方は全く返事をせずただ俯いていた。

「アレはちょっとねぇ? 男子少ないから雪斗君がせっかく話しかけてるのに」

あれじゃ印象は悪くなる一方だ。

「私、ああいうタイプ嫌い」

咲弥はスバリ言ってのけ、またポッキーを口に含んだ。

「咲弥は食べすぎ、また太るよ」

「大丈夫、私の場合食べたもの全部乳につくから」

そう言って豪快に笑い、自慢のFカップを揺さぶって見せた。

「あぁ、そうでしたねぇ」

ごくごく普通サイズの私にとっては嫌味にしか取れない。

というか、完璧嫌味なんだろうけど。

「ちょっとトイレ」

そう言って、「よっこらせ」と立ち上がる。

本当に、なんとかならないの?

この体!

まだ若いハズなのに、ご老人の苦労や苛立ちが痛いほどに理解できる。

「大丈夫?」

咲弥に手をかりながら、やっとの思いで教室を出る。