彼女は、真剣なまなざしだ。

「私がいつものように起こしてさしあげて、幽斗さんと一緒に学校へ行かれました」

「でも……じゃぁなんで私はこの家にいるのよ」

ふざけないで。

なんの冗談なの?

「だからそれは、夢花さんが忘れ物をして途中で取りにこられたからです。確か――午後からの授業で使う、数学の教科書だとおっしゃってましたよ」

そう言いながら、金城さんは勝手に私の荷物を探る。

私はそれを止めなかった。

「ほら、ありました。もうしばらくここで暮らすのですから、忘れて困るような物は旅行カバンから出しておくといいですよ」

そう言いながら、私に数学の教科書を手渡す。

今までの金城さんの言葉の中に嘘偽りが隠れているとは思えない。

「さぁ、行きましょう」

促され、私は奇妙な気分のまま、家を出た――。