翌日、私が目を覚ましたときに幽斗君の姿はどこにもなかった。

お手伝いさんにどこへ行ったのかと尋ねると、驚いた表情で「もう学校に行かれましたよ?」と言われた。

時計を見ると、すでに10時が過ぎている。

「なんで起こしてくれないんですかっ!?」

思わず文句を言うと、「え……あの……」と、困ったように口を閉じてしまった。

私が一人でせっせと着替えをしていると、さっきのお手伝いさん――金城 柊(カネシロ ヒイラギ)――がやってきた。

「夢花さん、学校までお送りします」

エプロンで手を拭きながらそう言う金城さんに、私は目を輝かせる。

「本当!?」

「はい。ですが……その服では学校へは行けませんよ」

そう言って、私を指差す。

え……?

なにを言っているのかと視線を鏡に移せば、そこにはパジャマ姿の自分が立っていた。

「へ――?」

どういう事?

今パジャマから制服に着替えてたのに――。

「それで、お忘れ物はありましたか?」

「……忘れ物?」

「えぇ。それを取りに戻られたんですよね?」

いつもの笑顔で、いつもの口調でそう言われる。

なに、言ってるの?

さっぱり意味がわからない。

「今から学校へ行くのよ。いつもあなたたちが起こしてくれるから、遅刻なんてすると思わなくて――」

言いながら、パジャマを脱ぐ。

金城さんはそんな私を見つめながら、「夢花さんは今朝、ちゃんと学校へ行かれましたよ」といった。

「え?」

着替えの手を止め、金城さんを見る。