「咲弥!?」

玄関の前で家の中を眺めている咲弥に、私は目を丸くする。

「すっごい家」

関心したようにそう呟く咲弥。

もちろん普段着で、白のシャツに水色のカーディガン姿だ。

「咲弥、なんでここに……っ」

そう言う私の後ろから、のそっと幽斗君が顔を覗かせた。

私の肩越しに咲弥を見て、「今いいところだったのに」と、文句を垂れる。

「呼んだのは自分でしょ? おじゃましまぁす」

呼んだ?

幽斗君が咲弥をここに?

いつの間に!?

ただ驚きで目を丸くする私に、「隠してたら、後々面倒だと思って」と、幽斗君がポソッと呟いた。

「え?」

「こんなことでお前たちの友情が崩れるとは思わないけど、念のためだ」

そう言い、照れたようにそっぽを向く。

幽斗君、私たちの関係まで心配してくれてたんだ……。

そう思うと、胸の奥が音を鳴らす。

少しくらいエッチでも、許してあげようかな。

なんて、甘い考えまで出てきてしまう。

居間に通された咲弥は「ひゅーっ」と、唇を鳴らした。

「すっごい豪華だね!」

和室といえど、その広さは膨大。

12畳の部屋が3つ繋がっているのだけれど、その襖をすべて取っ払っているので計36畳の広さ。

その中には、でっかなテーブルが一つとソファ代わりに並べた座椅子があるだけ。

一番奥の部屋には掛け軸や古い坪などがズラリと並んでいて、もし壊したらと考えると、近寄るのも恐ろしい。

そして、部屋のすぐ外には大きな中庭の見える廊下。

中庭にはししおどしがあり、心を落ち着かせる音が響き渡る。