「お前の母親に、一時的にだけ、少し考えが足らない霊を憑かせてもらった。

その霊の性格が母親の性格にリンクして、あんな簡単に了承したんだ」

それって……。

簡単に言えばお母さんに霊がとり憑いたって、こと――?

不安な表情になると、幽斗君が私の頭をなでてきた。

「憑くのは一時的だ。大丈夫、心配するな」

「本当に大丈夫?」

「あぁ。俺が言うんだ、間違いないさ」

そう言って自信満々に微笑む表情に、ホッとする。

それにしても、幽斗君てやっぱりすごい力を持ってるんだ。

まるで、霊を自由自在に動かせちゃうような。

「ここが、俺の家」

さっきの公園の近くまで来て、幽斗君が立ち止まった。

「すご……」

普通の家の3倍はあろうかというその大きさに、目を疑う。

立派な門の奥に見える広い庭。

その向こうに、幽斗君の暮らす豪華な家が建っていた。

「入れよ」

玄関の隣についている指紋認知システムに親指を押し当てると、カチャっとロックが外れる音がした。

「おじゃまします……」

ドアを開けてもらい、そーっとそーっと足を踏み入れる。

家の中は純和風で、和紙の電気がほんのりとした明かりを落とす。

「二階が俺の部屋」

そう言う幽斗君の後ろについて歩く。

なんだか私、挙動不振すぎて不振人物みたいかも……。

二階へ上がると、一番突き当たりの部屋に幽斗君の部屋があった。

「フローリングなんだ」

すべてが和風テイストな家だから部屋の中も和風なのかと思っていた。