玄関のノブに手をかけた瞬間、私は視線を感じて振り向いた。

でも、そこには誰もいない。

体育館で感じたような気味の悪さが体中を駆け巡る。

「誰?」

見えない相手へ向けて声をかける。

その時だった。

にゃぁお。

まるで、トンネルの中にいるように猫の鳴き声が反響する。

私は、ノブから手を引っ込めて、辺りをキョロキョロと見回した。

どこ?

どこで鳴いてるの?

恐怖心から、足がすくむ。

にゃぁお。

にゃぁお。

猫の鳴き声は次第に近づいてくる。

さっきまで晴れていた空も、あっという間に灰色の雲に覆われてしまった。

「やだ……こないで」

声が震え、涙がにじむ。

徐々に近づいて聞こえる猫の鳴き声は、時折悲しく、時折怒っているようにも聞こえてくる。

なに?

なんなの、これ!