「憑かれたのが、夢花でよかった」

「なに言ってるのよ」

幽霊になんて、憑かれないほうがいいじゃない。

「俺、本当は夢花を助けようかどうか迷ってた。今までも、ずっと手を貸したり貸さなかったり、してきた」

え――?

「どう……して?」

目で見てわかるのに。

なんで手助けをしようとしないの?

「怖かったんだ」

幽斗君の手に、更に力が入る。

まるで、私を離すまいと必死になっているように。

「最初は、自分の力を使って色んな人を助けてた。だけど、それはお寺に来たお客にだけだったんだ」

私は、そっと幽斗君の手に触れた。

すごく、震えてる。

「だから、知らなかった。普通のクラスメートに自分の力を使うと、『気持ちが悪い』って、嫌われるってこと――」

ズキン。

私の胸が、悲鳴を上げた。

『気持ちが悪い』

「まさか……それで……」

イジメにあった経験があるから、私を助けようかどうか、迷ってたの?

「ごめん。こんな事言うつもりじゃなかったんだけど……」

そう言い、フッと腕の力を緩める。

私は幽斗君に向き直った。

不安そうな顔……。

今にも崩れ落ちてしまいそうだ。