恐怖も、見えない力も、すべてが解けていく。

そして、一瞬だけ真っ白な世界へと落ちて行った。

「夢花!!」

その声に吸い上げられるようにして、私の意識は戻る。

「幽斗君……」

私の体を支える幽斗君の腕。

「しっかりしろ!」

「大丈夫……大丈夫だよ」

少し頭はクラクラするけど、ちゃんと自分の足で立つ事ができた。

「夢花、やっぱりあんた……」

咲弥が、信じられない。という表情で私を見ている。

そうだよね。

だって私、咲弥に『憑かれてない』って、言ったばかりだもんね。

「ごめん……。本当は、私自身に憑いてるらしいの。動物の、猫の霊が」

「猫の……」

そう呟いてから、黙り込んでしまう。

驚いているのか、理解できずにいるのか……。

「それは、治らないの?」

「お経での除霊はできないんだって。霊が弱いから、私自身に負担がかかるから」

「そっか……」

「でも、幽斗君に抱きしめられたら、その時は霊の力が弱まるの」

私は、保健室での話しを咲弥に聞かせてやった。

全部丁寧に説明できたかどうかわからないけど、「自分でも信じられないから」と言う言葉を最後に付け加えた。

「それでも夢花は夢花だから」

咲弥はそう言って、分かれ道に指しかかってから、いつもと同じ笑顔で手を振った――。