猫なんてどれも似たようなものだ。

特に目立つ特徴がなければ、すべて同じに見える。

でも……。

その、瞬間。

ゾクリ。

と背筋に虫唾が走った。

昨日感じたような鋭い視線。

なに……?

脂汗が浮きでて、ズッシリと体が重たくなる。

「夢花?」

幽斗君が異変に気づき、顔を覗き込んでくる。

ダメ。

喉になにかが詰まって、返事ができない。

咲弥の混乱した声が聞こえてくる。

そして、あの黒猫から目が、離せない――。

吸い寄せられる。

グイグイと。

知らない世界へ。

にゃぁお。

にゃぁお。

黒猫が鳴くたびに、私の足は一歩一歩引っ張られていく。

ど……して?

恐怖から、涙が流れる。

どうして、私を連れて行こうとするの――?

意識が遠のく瞬間、幽斗君が強く抱きしめてくれた。

強い、お香の匂い。

その匂いを命一杯吸い込むと同時に、私の体はスッと軽くなる。