「なっ……」

予想外の言葉に、咲弥は目を見開く。

ただ、自分が私たちの邪魔になりたくないから『2人で帰りな』といってくれただけなのに。

「幽斗君、そんな言い方ないよ。咲弥は遠慮してくれたんだから」

慌てて2人の間に割って入ると、幽斗君は少し目を伏せた。

「悪い。こういう友達とか、俺理解できなくて」

へ――?
それって、どういう意味……?

「遠慮せずに、3人で帰ろう」

幽斗君はさっきよりも優しい口調でそう言い、咲弥も首をかしげつつも頷いた――。

☆☆☆

3人で帰る道は、いつもの倍以上長く感じられた。

なぜかというと……。

とにかく、共通の会話がない。

咲弥とばかり話をするワケにもいかないし、幽斗君とばかり話しをするワケにもいかない。

結局、3人は黙って歩くしかないのだ。

「あ……」

そんなとき、咲弥が小さく呟いた。

「どうしたの?」

そう聞きながら振り返る。

そこには、家の塀の上を歩く、黒猫の姿。

「この猫、昨日見た猫じゃない?」

咲弥の言葉に、私は「そうだっけ……?」と、首をかしげる。