「あぁ。っていっても、今じゃアロマキャンドルみたいに普段でも頻繁に使われるようになってるよな」

確かに。

心が落ち着いてリラックスできる香りとして、雑貨屋さんなんかで色々見たことがある。

「それ、いつも持ち歩いてるの?」

「そ。俺こう見えてもストレス溜まりやすいから」

「ふぅん……? そんなふうには見えないけど」

私が疑いの目を向けると、幽斗君は楽しげに声をあげて笑った。

あ、こんな可愛い笑顔も見せるんだ。

「本当は違う」

「へ?」

「ストレスじゃなくて、憑かれやすいんだ」

「疲れやすい?」

「憑・か・れ。まぁ、うちは寺だから当たり前の体質なんだけどな」

体質――。

「やっぱり、そういう体質ってあるんだ」

「あるよ。自分だってそうじゃん」

私――?

「私、やっぱりそういう体質なの? 夢を見た次の日にはおばあちゃんみたいになっちゃうの」

「あぁ、それも霊感体質の一つだ」

そう言いながら、お線香を私の枕元に立てる。

ちゃんと、オシャレなお線香立ても持ち歩いてるんだ。

「でもさ、私の場合――」

「俺に抱きしめられると、それが治る」

「わかってたの!?」

驚いた顔をすると、幽斗君は「前に『知ってる』って言っただろ? 俺には全部見えてた」と言った。