「夢花」

今朝聞いたばかりの声に、私は振り向く。

また、こいつか。

私は目の前の幽斗君にうんざりした表情を見せた。

「なによ、またなにか用事?」

「できたんだ」

そう言って、ズイッと私の前に5枚の写真をつきつけた。

あぁ、昨日平野先生が写したやつだ。

「なになに? この写真いつ撮ったの?」

咲弥が興味津々に覗き込んでくる。

「昨日。平野先生が新しいカメラのためし撮りにって」

そう言いながら、3人でそれぞれ写真を見ていく。

どれもこれも中途半端にタイミングがずれていて、信じられないくらいにへたくそだ。

これで写真部の顧問なんかできるんだろうか……。

「見てコレ、夢花白目むいてる!」

写真の一枚を指差し、咲弥が大笑いする。

確かに、ひどい顔だ。

写真の中の私は目が半開きになり、白目をむいて、ピースサインをしている。

「こんなののなにが『記念』よ」

そう呟き、幽斗君を睨む。

けれど、幽斗君は真剣な表情で写真に見入り、私の声は届いていなかった。

「ねぇ、そんな真剣に見ないでよ。どれもブサイクなんだから」

ジイッと見られていると、だんだん恥ずかしくなってくる。

笑って流される方がまだマシだ。