教室へ入ると同時に「あれぇ? 夢花珍しいね」「本当だ、今日はおばあちゃんじゃないじゃん」と一斉に声を浴びせられた。

「うん、なんかねぇ」

曖昧に頷いて笑顔を見せる。

そういえば、最近は毎日猫の夢を見ていたかもしれない。

「昨日も体すぐに治ったしさ、もしかして完治が近いんじゃない?」

完治……かぁ。

でも、幽斗君に抱きしめられて治ったこと以外を見ると、私の体質は明らかに悪化している。

前は夢を見ても一ヶ月に一度程度だったんだ。

こんな頻繁に夢を見る事もなく、体だってちょっと痛むかな? くらいのものだった。

それが、たった数年でここまで悪化している。

「ま、焦らなくていいんじゃない?」

そう言って、咲弥がポッキーを差し出してきた。

私はそれを一本受け取り、口にふくむ。

チョコレートの甘い味が口いっぱいに広がり、安心感を覚える。

「完治してもしなくても、夢花は夢花なんだから」

ポンポンと、慰めるように頭をなでてくれる。

どこまでも優しいな、咲弥は……。

「不安になりゃ泣けばスッキリするさ。私の胸でな」

ボイン。

ボイン。

でもって、嫌味たらしくわざと揺らして見せ付けてるわけね……。

「いっそのこと、その胸で窒息死したいくらいよ」

そう言い、ハッとあきれた息を吐き出す。

「なに今の。ちょっと私を馬鹿にしたでしょ?」

「居乳イコール馬鹿説は根強いからねぇ」

「ま、居乳でお馬鹿は今人気ですからぁ」

「大きくても垂れちゃってたら問題外だけどねぇ」

お互い負けず劣らずのアホだ。

こんな言い合いでもほんの少し本気になりかけた、その時。