世の中では、『特異体質』なんて呼び方をするのだろう。

ある程度時間がたてば直るけれど、毎回ある夢を見たときは必ず遅刻。

この体質は街中の噂になり、高校の入学式に遅刻したというのに怒られもしなかった。

「まぁ、午後の授業が始まるまでには元に戻るでしょ」

そう。

体に力が入らなくなるのは午前中だけ。

午前中移動教室までの道のりで咲弥に助けてもらっていたのに、午後からの体育で走り回っている。

なんなんだろう……。

私は灰色の地面から少しだけ顔を上げて思う。

これは、なんなんだろう。

なんで、私なんだろう――。

やっとの思いで教室までやってきた私は、椅子に座って大きく息を吐き出した。

「遠かった」

思わず呟き、咲弥が笑う。

「ほい、ジュース」

「あ、ありがとう」

ここまで歩いただけで喉はカラカラ。

そんな私のためにいつもジュースを買って来てくれるのだ。

まぁ、世話役係になってくれた日は私が学食をおごってお返しをするんだけどね。

「ねぇ、夢花。今日新入生来るって知ってた?」

どこからか椅子を引っ張ってきて、私の隣に座る咲弥。

新入生……?

聞いたことはない。

私が首をかしげると、「やっぱり?」と少しだけ真剣な表情になる。

「なんかね、今日突然決まったらしいよ」

「今日?」

「そう。入学式に間に合わなかったのかなぁとか思ったけど、なんか怪しいよね?」

そう言って、ニヤリと笑う。