「やばいよ」

コソッと呟くと、咲弥は無言で頷いた。

でも、ここで逃げる私たちじゃない。

今日は何故だか知らないけど、体も元に戻っているのだ。

捕まえてやる!

そっと窓へ近づく私たち。

息を殺し、タイミングを合わせるために目で合図する。

音を立てないよう、そっと窓のカギを開けて――。

一気に開いた。

バンッ!

と、窓が開くと共に、「痴漢野郎!!」と罵声を浴びせかけた……。

にゃぁお。

……へ?

にゃぁお。

その鳴き声に身を乗り出して見ると、窓の外に小さな黒猫がいた。

「猫……?」

「じゃぁ、さっきの気配も?」

人影に見えたのは、この猫が木から地面に着地したから……?

「驚かせるなよっ!!」

拍子抜けした咲弥は猫へ向けてそう怒鳴り、驚いた猫は走って逃げていってしまった。

「あ~あ、怖がらせることないのに」

「フンッ! あれがオス猫だったらどうすんの、私のFカップ見られたじゃんよ」

咲弥……。

私は苦笑するしかなかった。

「さ、もう出よ。昼休みだよ」

「うん」

頷いて荷物を手に持った瞬間……。

私はバッと窓の方を振り向いた。

やっぱり――。

やっぱり、誰かいる!!

今度はさっきよりも強い気配と視線を感じる。

でも窓は開けっ放しだ。

その向こうには誰もいない。